2009年 3月31日
介護保険10年目の現場から

山陽「あすへの約束 超高齢社会とケア」

四月で十年目の介護保険。岡山県の老人たちにとって、住み慣れた場所での安心は本当に約束されたのか。二月十日からの連載(第一、二部とも初回一面、以降社会面)が、制度の根幹に迫る。

十一回続いた第一部は「支えの場で」。二〇〇六年の法改正で介護予防重視によって「要支援」の段階が変更された悪影響や、自宅介護の成功例などを取り上げた。津山市の居宅介護支援事業所ケアマネジャーは七十五歳女性を半年ぶりに訪ね、まるで別人のような姿に驚く。女性が「要介護」から「要支援」に変わり、再び要介護へと戻ったのは、訪問介護の回数が減る要支援になった後、認知症が一気に進んだためだった。女性は結局、認知症対応型グループホームに入った。

昨年十一月、九十七歳で亡くなった岡山市の女性宅の部屋に、遺影を持った長女を囲む十一人の男女の写真が飾られている。闘病を七年支えたケアスタッフで、その表情には充実感が浮かぶ。最重度の要介護女性の「夫と過ごした家から天国に行きたい」という願いを、近所の人と協力してかなえてやれたからだ。

三月二十二日までの第二部「やさしい手」(十一回)は、人手不足の介護職場を支える人たち。業務負担に比べ報酬は低いが、倉敷市の二十代介護職は寝たきり女性の立とうとする努力を見て仕事の重さを実感。岡山市の訪問介護事業所の三十代管理者は「喜びがあるから燃え尽きない」。一方、倉敷市の男性は九か月で特養老人ホームを辞めた。「理想だけでは務まらない」と感じたからだ。介護職離れで専攻生の募集を停止した短大もある。

清水玲子編集委員と社会部の河本英、阿部光希、井上光悦、水嶼佑香記者が担当。半年かけ第六部まで。神辺英明同部副部長は「どういう支えが必要か。ケアの理想と現状を知ってほしい」と語る。(審査室)

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