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2009年 4月28日
寿命を延ばす社会の謎に迫る
神奈川「長寿都市」
横浜市青葉区は男性の平均寿命が八十一・七歳。全国の市区町村の中で、長寿日本一である。同区は、東急田園都市線で都心に通勤するサラリーマン家庭の住宅地だが、住宅地の男性がなぜ日本一に?という疑問からこの企画は二月に始まった。
三十五―六十歳の死亡率が全国平均の約半分と特に低いことが寿命を延ばしていると分かり、第一部「青葉区トップの衝撃」ではこの働き盛りのサラリーマンに密着した。朝四時に起きて犬の散歩、庭の手入れと動き回る朝型人間や、区民活動センターで料理、ゴルフとサークル活動に多忙な人を紹介し、人生観を聞く。一方、区の喫煙率は全国平均の半分以下、世帯の平均年収は一千万円を超えていると指摘、健康に留意しつつ、リッチな生活を楽しむサラリーマンの姿が浮かび上がる。
横浜市中区にある寿地区は昔「ドヤ街」と言われた。実は中区の平均寿命は急速に上昇しつつある。なぜだ、と第二部「短命返上の寿地区」で取り上げた。すると生活保護受給者が80%を超える「福祉の街」に変容していた。簡易宿泊所に泊まっていても、市は住まいと認めて生活保護を支給している。部屋には緊急時の通報ボタンもある。
ではあいりん地区を含む大阪市西成区はどうだろう、と大阪へ飛ぶ着眼は光っている。同区の男性の寿命は全国で最短命の七十三・一歳、横浜市中区より三・二歳も短い。なぜか、謎解きのような記述が読者を引き込む。
第一部は報道部の米本良子、二部は柏木智帆記者が担当。二人は現場を歩き、寿命という統計数字に隠された意味を探っていく。古賀敬之部長は「寿命は社会的な要因で延びたり短くなったりすることに着目し、どういう社会が寿命を延ばすのか、という切り口で取材している」と話した。第三部は五月。(審査室)