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2009年 7月7日
自ら選ぶ人生―考える契機に
日刊県民福井「『らしく』生きる ふくい人物記」
多様化する価値観の中で、人生を自ら選択できる時代だからなのだろうか。自分の「居場所」を探し求め、人は思い悩む。自分の進むべき道とは何なのか。1月から始まった連載は、福井県内で「自分らしく」生きている人、生きようとしている人たちを訪ね歩く。
第1部は『生きがいを手に入れた人たち』。大野市にある蔵元で、41歳の杜氏は「自分の思い描いた酒を造りたい」という夢を追う。学生時代にアルバイト先で日本酒に魅せられ、2年余で会社勤めを辞めて各地の酒蔵を巡り、大野にたどり着いた。福井市で登山専門店を営む62歳の男性は、神戸市で阪神大震災に遭って「価値観が一変」、大手企業の取締役というポストを捨てて福井に移り住んだ。収入は激減したが、代わりに「充実した人生」を手に入れたという。
第2部は『思いを伝えたい人たち』。県内の救急救命士第1号の男性は、四半世紀を福井市消防局の救急隊員として過ごした経験から、後輩に「相手を思いやる心」が大切と教える。越前漆器の里、鯖江市河和田で蒔絵師40年の男性は、工房開放など伝統産業PR活動の先頭に立つ。「自分を生かしてくれた社会、産地への恩返し」だ。第3部『命と向き合う人たち』は、自らもがんを患い「前向きに生きよう」と、語らいの場・患者の会を立ち上げた男性などを描く。
自らの意思で一歩を踏み出し、居場所を定めた人たち。だが、実際にはこの「一歩」が難しい。デスクを務める鹿野克志編集委員は「あ、こういう生き方もあるんだ、と読者が考えるきっかけにしてほしい。だから人選がすべて。有名人は避け、普通の人たちを選んだ」と話す。藤共生(キャップ)、小柳保志、梅沢あゆみの3記者を中心に報道部が取材班を組む。今後は趣味に生きる人などを追っていく。(審査室)