2009年 9月1日
航空業界の構造欠陥に迫る

高知「空の隙間 ボンバル機事故からの探求」

2007年3月13日、高知県南国市の高知空港にカナダ・ボンバルディア社製の高速プロペラ機DHC-8-Q400が火花を散らしながら胴体着陸した。伊丹発全日空1603便。乗客56人らにけが人はなかったが、1本のボルトの脱落によって前脚が出なかったことが判明、航空業界の構造的な問題も横たわっていた。事故から2年を前に1月末から始まった1面連載は、見過ごせない「空の隙間(すきま)」に迫る。

第1部「実録3.13」(1~2月、12回)では、なぜボルトがなくなり、前脚格納扉の開閉装置から金属筒が飛び出して扉の開閉を妨げたのかを検証した。事故機は全日空に納入前、前脚格納部の作動試験中に部品を破損したが、ボンバル社は作業部門が指示した開閉装置一式交換ではなく、部品交換で済ませていた。手順書もない作業の中でボルト類を付け忘れたと考えられる。国交省の事故調査委はボンバル社に説明を求め、拒否される。

記者はカナダへ飛ぶ。第2部「巨大メーカーの実像」(4月、17回)。ボンバル社副社長は「事故原因は特定されていない」とし、現場からの聴取内容は明かさず、事故調査委の指摘を上回る対策をとっていると強調した。同型機は欧州でも事故を重ね、今年2月には米国で死者50人の事故を起こしているが、燃費の良さなどで人気がある。「統計上の安全性」という言葉が何度も返ってくる取材では「飛行機を売る側の思想」がのぞいた。

今月始まる第3部は、事故調査委のあり方を中心に、業界特有の壁、障害を掘り下げる。社会部・高橋誠、早崎康之、東京支社・池一宏の3記者が担当。デスク役の山岡正史社会部長は「ボンバル機のトラブルは胴体着陸以前から追っていたが、業界の姿勢に疑問を持ち、長期で取り組むことにした」と語る。(審査室)

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