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2009年 10月13日
伝統、先端...進化する技術力
山陽「新せとうち産業風土記」
瀬戸内の風土と人々によって織りなされ育ってきた産業を、3月から紹介している。1976年の「せとうち産業風土記」連載から30年余。伝統産業に先端産業が加わり大きく塗り変わった産業地図から、地元産業の持つ力をあらためて探り出す企画だ。地方経済面で第4部まで進み、各部とも初回だけ1面に頭出しする形をとっている。
第1部「麺」(3~4月、8回)では、そうめん作りで育った岡山県の手延べの技が、うどん、冷やし中華、和そばへと広がっていく過程を取り上げた。生産量全国トップの手延べうどんの発展は、そうめんの量産化の失敗から、太ければ量産しやすく採算もとれることに気づいたのが始まりだったとは面白い。
第2部「造船」(5~6月、8回)は、晴れの日が多く波穏やかな立地を生かした造船所の技術の継承が中心。波の抵抗を減らす球状船首、船舶の外板などの曲線部を加工する職人技。700~80年代の造船不況の大波を乗り切れたのは、こうした高い技術があったからだ。
第3部「ジーンズ」(7~8月、10回)は倉敷市児島などを中心に、足袋、学生服の裁断・縫製技術がデニム生地加工に応用されていく道と工夫を紹介。軽石を使って着古した風合いを出す洗い加工は、米国生まれのジーンズを日本に根付かせた。
第4部「福祉」(9~10月、7回)は、福祉を支える事業や人に焦点を当てた。岡山市のリハビリ機器メーカーも義肢製作会社も、岡山大学医学部が開発を後押ししてくれたと強調する。弱者のための連携が心強い。
これまで、経済部・井上建吾、佐藤貴宏、田中泰、玉川貢広、鳥越謙一、秋山昌三、木村俊雄の各記者が担当。綾野雄紀経済部長は「産業の移り変わり、構造変化を2年くらいかけてじっくり見たい」と語る。(審査室)