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2010年 2月2日
古里への思い、原点から問う
北日本「富山に生まれてよかった」
タイトルを問い掛けの言葉としても使い、元日から始まった1面連載。取材班の一番手に選ばれた社会部の小林大介記者は、東京・小石川にある富山・石川両県の男子学生寮「明倫学館」に乗り込んだ。取材班の男で一番若い32歳。寝食を共にして本音を聞けるだろうという期待を背負って。
第1部「東京ララバイ」(13回)は、東京の光と影を歌った1987年のヒット曲名に東京で暮らす富山出身者を重ねた。42人いる富山出身の寮生の口からは、富山について「嫌いじゃない」に続いて「閉塞(へいそく)感」「不便」「夢がない」といった否定的な言葉が出た。寮生と同郷の女友達は、出身を聞かれたら知名度の低い富山ではなく、いま祖母と暮らす千葉県の都市を教えると言った。その女友達の知り合いの滑川市出身者は「暮らしやすい富山に帰るのも楽じゃなさそう」と厳しい就職戦線を語ってくれた。
明倫学館で猛威を振るった新型インフルエンザから回復した早大3年生は、射水市で倉庫会社を経営する父親と六本木で会う。父は中途半端だった自分の東京生活を反省しながら、息子に「東京で働きたいなら富山には戻らんでもいい」と言った。しかし、本当は「選択の結果として富山だったら最高」と思っている。
東京で働く人たちの胸中も複雑。三井物産で研修中の富山市職員は、チャンスの多い東京に魅せられつつ、富山を良くしたい気持ちでいっぱい。同市出身のイベント会社経営者は「古里があるから頑張れる」と言う。
「富山に生まれた意味を、コンプレックスとも素直に向き合って問い直したい」と語る光安勝人・社会部部長デスクの下、小林記者と寺田幹政治部次長、荒木佑子経済部記者が担当。Uターン夫婦が中心の第2部「山里のバラード」は1月27日から掲載中。(審査室)