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2010年 3月9日
この世は捨てたもんじゃない
西日本「あなたの物語 青空」
人生は一度きり。できれば空を見上げて生きていきたいと誰もが望んでいる。1月1日から社会面で8回の連載でスタート。現在は随時掲載として「この世は捨てたもんじゃない」「人は独りぼっちじゃない」とのメッセージを込め、記者が歩き見聞きしたこと、九州各地から寄せられた「物語」を紹介している。
トップ登場は山下信行さん(73)。地域防犯の黄色い腕章を着け福岡県筑紫野市内で、562世帯、1355人が暮らす地域の見守り役を日課としている。全戸を訪ねて自前の住民台帳を作成し、住民の入院や介護の相談にも乗る。人とつながり、分かり合う関係をつくる、地域の「パイプ役」が山下さんの姿だ。
熊本市で生まれた滝川広志さん(49)は今年、芸能生活30周年を迎えた。芸名は「コロッケ」。13歳の時に中耳炎を繰り返し右耳は今もほとんど聞こえない。幼いころに両親が離婚し、1歳上の姉との生活は苦しかったが、「右耳がダメでも左耳がある」と笑い飛ばした母の強さと優しさに支えられた。焦るな、おこるな、威張るな、腐るな、負けるな―の頭文字「あおいくま」の家訓を胸に、謙虚に芸を磨く。
毎月1回、福岡市内の西日本新聞民生事業団を訪れ、財布から寄付金3千円を差し出す今村キミコさん(95)は、今年8回目の年女。「月に1度ぐらいは世の中のお役に立つことをしたい」と、76歳の誕生日から今年1月までに235回足を運び、寄付金総額は90万円を超える。今回もハイチ大地震救援にと3万円を出した。「歩ける限りは毎月来ます」と笑みを残す。
「身近の伝えたい話を自分の言葉でつづる」コーナーにしたいと、担当デスクの傍示(かたみ)文昭報道センター部次長は語る。部長を含め立場にこだわらず執筆するよう社内に呼びかけている。(審査室)