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2010年 3月16日
漁業で地域を元気にしたい
岩手日報「三陸のあす」
世界三大漁場を抱える三陸。産業の柱である漁業を取り巻く環境は厳しい。しかし人々は意欲を持って取り組み、創意工夫を重ねて「三陸のあす」を担おうとしている。そんな姿にスポットを当てた1面企画(3回目から夕刊)が元日から2月中旬まで30回掲載された。
第1部「海は今」は大船渡市の越喜来(おきらい)漁協、宮古市の重茂(おもえ)漁協からの報告。定置網漁の主役はブリからサケに代わった。最近では南の魚であるサワラが混じる。地球規模の海況変動で魚の数が変わる「レジーム・シフト」が三陸でも起きている。しかし力強く網を引く漁師たちの営みは変わらず、稚魚放流や養殖など資源維持の努力が続く。
第2部「恵みを生かす」は、海産物に工夫を加えて提供したり漁業を観光に活用したりする試み。山田町や大船渡市でシーズンに開設する「かき小屋」では、取れたてのおいしい殻付きカキが食べ放題だ。普代村の「北の漁場 網起こし体験ツアー」は迫力満点の定置網漁を船から見学させる。田野畑村の「サッパ船アドベンチャーズ」は絶壁が続く北山崎周辺を小型船で周遊する。宮古湾ではメバルの稚魚放流が順調で釣り客誘致に期待がかかる。
第3部「浜の開拓者」は新たな課題に挑戦する人たち。イサダ(ツノナシオキアミ)から高血圧に有効とされるアミノ酸「ギャバ」を作り出す技術の開発。増えすぎたウニで藻場が衰退する「磯焼け」を防ぐためのアラメの海中造林。ヘルメット式潜水の南部もぐりの継承。アカウミガメに取り付けた小型記録計による研究など多彩だ。
取材に当たった谷藤典男報道部・部長は「一次産業が元気でなければ地域は元気にならない。取材で人々や地域の熱意を実感でき、時代が変わっても三陸から漁業が消えることはないと確信した」と話す。藤田和明記者が協力した。(審査室)