2010年 4月27日
発達障害者の悩み見つめる

愛媛「自立への助走」

対人関係などで様々な困難を抱えながら外見では分かりにくい発達障害。診断と対応が遅れ、社会に適応できないまま一人で悩む若者も多い。3月28日から社会面5回連載で、愛媛県内の青年期以降の障害者に焦点を当て、その現状と自立に向けた課題を探った。

松山市内の会社に勤める男性(27)が広汎性発達障害と診断されたのはやっと2年前。それまでは他人に「話を合わせることが苦手」で「聴覚が敏感」な自分に長い間、悩んできた。大学を中退し、勤めた会社も3か月で解雇。県内の若者自立支援施設に相談して初めて障害を知った。

発達障害者を対象に新設された県立松山高等技術専門校のOA実務科に入学。パソコン関係の資格を取得して就職、今では「仕事を続けることが生きる自信につながっている」。職場も休憩時間などで特別な配慮をする。

発達障害者は臨機応変な対応が難しい。「対人関係や変化の少ない仕事、自分のペースでできる技術職などが比較的向いている」と森本武彦・県発達障害者支援センター長。「特性を生かせる仕事は必ずある」と高等技術専門校のアドバイザーもいう。まず得意、不得意を理解し、「自己肯定感を取り戻すことから」始める。注意欠陥多動性障害だが漫画家として自立した女性(29)もいる。

連載は3月まで映像報道部記者だった酒井俊宏・運動部副部長がまとめた。引きこもりの取材をした際、発達障害を併せ持つ人の多いのに気付いたのがきっかけ。映像ニュース取材の合間に、「悩んでいる若者に手がかりを」と関係者の話を聞いて回った。

県内では支援活動は動き出したばかり。取材で医療機関などの支援体制も足りないと痛感。いずれ「子供から大人や高齢者まで、さらに幅広く取材して紹介したい」と温める。(審査室)

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