2010年 5月11日
苦難を乗り越え大学経営

埼玉新聞「偽らず、欺かず、諂(へつらわ)わず」

水田宗子さんは埼玉県坂戸市にある学校法人・城西大学の理事長である。父親の水田三喜男元蔵相が創設し、現在は城西大、城西国際大、城西短期大の3校に計12学部16学科をもつ。1月に始まったこの企画は水田さんの評伝であり、今年45周年を迎えた大学の紹介でもある。

水田さんは詩人で、女性学の先駆的な研究者で、5人の子どもの母親でもある。第1章「私の原点、父、水田三喜男」は戦時中の疎開や、戦後、政界に進出した父親の回想。東京女子大で英米文学を学び、フルブライト奨学生で米国のイエール大学に留学。第2章「自分史と米国での25年」はまだ戦争の記憶が生々しく男性中心だった50年前のアメリカが活写されている。フィリピン人のルームメイトと戦争の話で意見が合わずコップの水を顔に浴びせられた体験。彼女の祖母は日本兵に殺されたという。水田さんは理不尽な仕打ちに怒りつつ、日本人に対するアジアの厳しい目にショックを受ける。イエール大学の米国人の同期生と結婚。アメリカはペア社会だから、シングルの女性は社交の場から閉め出されるという裏の現実も見た。

帰国し父親が創立した城西大で教べんをとり、学長を経て理事長に。第4章「グローバルに活躍できる人材育成」では、留学生受け入れの苦労や大学の地元貢献が紹介される。健康市民大学や元気朝市など多彩。学生スポーツでは箱根駅伝に10年連続出場。市民応援団がバスで沿道に駆けつける。理事長としても八面六臂の活躍だが、創業者が優れていただけに、後継者の苦労はおして知るべし。連載は4月末に終了。一人で書き続けた斎藤柳光特別編集委員は「水田イズムともいうべき人間観、教育観を伝えたかった」。石野栄一編集局長は「地元の大学と提携を深めるため特に力を入れた」と言う。(審査室)

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