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2010年 12月14日
地域に〝包容力〟はあるか
桐生タイムス「いじめと向き合う」
上村明子さん(12)=群馬県桐生市立新里東小6年=が自宅で首つり自殺したのは10月23日。クラスで「臭い」「汚い」と言われ続け、仲間外れにされていた。子どもの自殺は地元の地域紙にとって重いテーマだが、11月16日から10回連載し、学校で何があったのか、痛ましい悲劇をどうしたら防げるのか考えた。
明子さんの母親はフィリピン人で父親は日本人。4年生の10月に愛知県から引っ越し、新里東小に転入した。5年の最初の授業参観に母親が来てからいじめが顕著に。「フィリピンの母親」「転校生」。二つの異質性が標的になった、と第1回で指摘した。妹と交換した自己紹介カードに「学校を消す」と書いたのは昨年10月。すでにいじめは深刻だったようだ。明子さんの学級は6年の4月から崩壊状態で、担任の女性教師に暴言を吐く子も。反抗的な態度は「一部の女子で特に顕著」だった。校長も加わったチームで担任を支援し、授業中の私語禁止などルールも作ったが「守る児童は少なかった」。学校のクラスを立て直す努力は空回りし、一方、明子さんへのいじめについての認識は薄かったようだ。亡くなる2日前の校外学習。担任が休みがちな明子さんを誘った。明子さんが嫌々行くと複数の児童から「なんでこういうときだけくるんだ」の悪口。「あれが決め手になったと思う」と父親は言う。
住民が成り行きを見守る中での取材は報道部の高橋洋成記者。「家族の立場に寄り添って学校を批判するのは容易だが、学校も努力していた。どうまとめるか悩んだ」。いじめは被害者と加害者、家族と学校が対立しがちだが、最終回で「地域全体で子供を育てるという理想に立てば、すべての人が当事者であり、心の傷を負ったはず。地域には、そうした傷をやさしく包む〝包容力〟がほしい」と書いた。 (審査室)