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2011年 1月18日
生活の足に迫る危機
山陽「路(みち)をつなぐ―生活交通白書」
地域の生活の足が危うい。人口減と高齢化で中山間地や離島を中心に公共交通が衰退、買い物や通院、通学もままならない。生活交通網の縮小、寸断で地域はどうなるのか。新年スタートの連載は危機の深刻な実態と課題を克明にあぶり出す。
元日1面トップから社会面に引き継いだ第1部は「『移』変」。岡山県西南部の瀬戸内海に浮かぶ離島、北木島は東部の港に70年通ってきた定期船の寄港中止問題で揺れている。1日3人も乗れば多いほうで、船会社は採算面から「もう限界」。だが、1日わずか3往復でも本土と結ぶ大切な足に変わりない。
住民有志は10年前から切符売りなど桟橋業務を引き受けて港を守ってきた。その有志も当初の70人が21人に減り、全員が60~70歳代。高齢化比率が80%近いこの地区には、本土への通院が必要なお年寄りも10人ほどいる。船会社の事情は分かるが、「船が来なくなるのだけは絶対に困る」。
総社市内で2年前、78歳男性が車にはねられ死亡する事故が起きた。ドライバーは88歳男性で、杖をつかないと歩けないほど。だが路線バスが廃止されて以降、病妻の世話でマイカーを運転せざるを得ない。高梁市内の山村の男性(85)は運転免許証を返納した。以来「2、3週間ほど家から出ないのは当たり前」。今春の統一地方選では10キロ離れた投票所までどうやって行くか悩む。津山市ではバス路線廃止が中学生らの通学の足を奪う。
「過疎地域のこんな危機的事態は近未来に都市近郊でも必ず起きる。いま取り上げて処方箋を探らないと手遅れになりかねない」と佐々木善久・報道本部長。国定啓人編集委員ら編集局横断チーム6人が担当する。1部は住民の視点で月内に20回、第2部は交通事業者側の視点で2月掲載予定。6月まで5部にわたり展開する。(審査室)