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2011年 4月26日
震災に立ち向かう人にエール
福島民報「今を生きる」
東日本大震災による福島県の死者・不明者3千数百人。原発事故は収束せず8万人以上が避難生活を続ける。厳しい現実の中で懸命に今を生きる被災者たち。特設面に「ふくしまは負けない」のメッセージを掲げ、震災に立ち向かう人々にエールを送る連載を始めた。
まず「避難先から」10回を掲載。新6年生の大浦将貴君たちは新学期、福島市荒井小の門をくぐった。海のそばの浪江町請戸(うけど)小に通うはずだったが、大津波と原発事故で故郷を奪われ避難先で通学することになった。地震当日は校庭に整列後、先生たちと必死に走って津波を逃れ、4キロ先の国道で大型トラックに拾われた。児童ら92人は全員助かったが、自宅にいた大浦君の母と姉、祖母、曽祖母は行方不明。家に戻れぬまま原発事故が起き町外へ移動した。くじけそうな心を笑顔に変えて「母ちゃんやお姉ちゃんはいつか必ず戻ってくる」と言う。
避難先の旅館から毎夜父親と電話する高3の玉川知史君。家族は無事だったが、東京電力の協力会社員の父は1週間後に召集された。今も福島第一原発で作業に当たる。「家族を頼む」と言う父の身を案じながら、体調を崩した母の看病やボランティアを買って出る。
原発10キロ圏内の店に帰れず郡山市で仮店舗を開いた商店主、行方不明になった兄の分までがんばる覚悟の30代の漁師、母を亡くしながら捜索活動に従事する20歳の消防署員、散り散りになりながら夏の大会出場をあきらめない双葉高野球部員。登場する人々の思いが伝わってくる。
「ここで生きているわれわれは何とか前を向いていくしかない。そんな人々の姿を紹介し続けていきたい」と早川正也報道部長。風評被害に立ち向かう人々などテーマを変えて継続する予定だ。鎌田喜之、湯田輝彦、佐藤昌之、佐藤庄太、柳沼郁の各記者が担当。(審査室)