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2011年 6月7日
生活一変、苦闘する県民の姿
福島民友「3・11から―福島原発・災害連鎖」
地震・津波に加えて原発の暴走。福島県民の生活は「3・11」で一変した。未曽有の災害連鎖の実態を伝える企画を震災50日後から開始。最初のシリーズ「失われた暮らし」(10回)は、放射能汚染、避難生活、風評被害に苦しむ県民の姿を1・3面連動で掲載した。
全村避難となった飯舘村の女性(62)。家族と助け合いながら水稲や葉タバコ、和牛繁殖に心血を注いできた。自宅を改修して民宿も始め長年の夢を実現させた矢先だった。20キロ圏の双葉町の男性(36)は2年前に建てたマイホームから県外に避難、4月からの町職員への中途採用予定も見送りになった。基準を上回る放射線量が検出された郡山市の小学校。校庭の表土を除去したが、処分先の住民の抗議で汚染土は隅に積まれたままだ。海洋汚染で出漁停止を続ける漁民、事故原発の劣悪な環境下で働く地元作業員、原乳出荷停止に見舞われた酪農家などの姿を伝えながら、国や自治体、東京電力の対応を厳しく追及する。
最終回の見出しは「安全神話信じた末」。東電OBで5期20年、第1原発を抱える大熊町長を務めた志賀秀朗さん(79)も今、横浜市で避難生活を送る。在職中は原子力防災訓練を実施するなど住民の安全に尽力した。運転開始以来、自然を汚すトラブルは一度もなかったことを思い出しながら、「40年間原発の恩恵を受けてきたが」と語る口調に無念さがにじむ。
5月末から第2シリーズ「押し寄せる危機」を連載。津波や原発震災の危険が警告されていたにもかかわらず対策が取られてこなかった実態、最前線での危機対応などを検証した。テーマを変えて続けていく。「復興など先の話で何年続くか見通せない。当面は動いている事態を多角的に記録していきたい」と菊池克彦報道部長。小野広司専任デスクが統括。(審査室)