2011年 6月21日
新たな価値観はぐくむ試み

 宮崎日日「口蹄疫からの新生」

宮崎県では昨年、家畜の伝染病の口蹄(こうてい)疫が猛威をふるい、牛や豚29万7808頭(県内全体の約4分の1)が殺処分された。昨年7月から12月まで連載した「検証 口蹄疫」(5部計38回)を受け、今年は「新生」を切り口に1月から4月まで3部計20回を連載した。

第1部「次世代畜産」では、病気に強い畜産を目指す取り組みを取材した。家畜にも快適な生活環境を整える「アニマルウエルフェア」の活動を紹介。ストレスが減れば「免疫機能が向上し、病気に強くなる」と言う宮崎大農学部の長谷川信美教授。広々とした草原に妊娠した雌牛を放牧する日南市の農家は「牛は病気にかかりにくく、足腰が鍛えられるため安産が多い。効果は歴然」。家畜の飼料は大半が輸入だが、安全な県内産に切り替えていく動きも広がる。宮崎は焼酎の産地だが、注目の的が焼酎かす。微量のアルコールを含み、家畜も食欲が増すという。串間市の寿海酒造は農業法人をつくって年間6千トンの焼酎かすを牛に与えて肥育、「モロミ牛」の名前で市場に出ている。

第2部「戦略を問う」で新しい農業の在り方を考え、第3部「農業県に生きる」では「食」の新しい挑戦を取り上げた。都城市職員や飲食店でつくる「都城ご当地グルメ推進協議会」は地元産の牛、豚、鶏すべて使った新メニューを提案する。県内140の農産物直売所では、対面販売しながら売れる商品を研究し、「適正価格」をいつも考えている農家も少なくない。消費者は自分好みの生産者を見つけ固定客になる。現金収入が高齢農家の生きがいだ。各地で生産者と消費者の距離を縮める努力が続く。報道部の小川祐司次長が仕切り役で同部の5人が担当。小川次長は「単なる復興ではなく、新生と題して新しい価値観や試みを書こうと思った」と狙いを語る。(審査室)

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