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2011年 7月20日
安全神話崩壊、現状を総点検
愛媛「伊方原発再考―福島が問うリスク」
四国電力の伊方原発(愛媛県伊方町)は運転開始から34年目。東日本大震災で「安全神話」が崩壊した今、地域は原発にどう向き合うべきか。6月から1面連載で現状を総点検し、脱原発を含めた今後を展望する。
第1部は「34年目の岐路」(5回)。原発は伊予灘に面する佐田岬の付け根に立地する。事故が起きれば岬の住民は逃げ場を失い孤立しかねない。しかも「ここは地滑り多発地帯」と愛媛大の地質専門家。役場から原発まで5キロほどの距離に地滑り危険箇所が10か所近く。前面の海域には活断層も走る。
立地条件の「指針に違反しているのでは?」。そんな記者の問いに原子力安全・保安院幹部は「対策の問題」とかわす。本当に大丈夫なのか。
第2部「事故への備え」(6回)で過酷事故時の防護や避難などの対策を検証。県が炉心事故を想定して毎年実施する防災訓練はいつも放射性物質拡散の寸前で終了する。訓練も「結局、安全神話に基づくもの」と地元防災関係者。伊方町も避難経路や避難所を指定するが、「一番心配なのは『足』」と住民。不安は根強い。市町村を超えた広域避難についての協議もまだ「検討課題」の段階だ。
伊方原発では「正常ではない」事態を全て地元自治体に通報・公表する安全協定を結んでいる。だが、過去には異常通報が遅れたケースもあった。「大事故の際に本当に機能するかどうか」と杉原俊之編集局次長兼政治経済部長。公表制度は四国電力次第というもろさもはらむ。
政治経済部と社会部、八幡浜、高松、東京支社でつくる取材班約10人が担当。7月下旬の第3部では南海地震などさまざまなリスクを検証する。4部以降は伊方原発訴訟、再生エネルギーなどがテーマ。福島原発事故収束への対応と同時並行で、今年度の最重要課題としていく。(審査室)