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2011年 8月2日
「想定外」を「わがこと」として
紀伊民報「防災対策を問う」
近い将来、東南海・南海地震が予想される紀南地方(和歌山県南部)。東日本大震災は、防災対策の根底からの見直しを迫るものだった。「想定外」にどう対処すればいいのか。5月から7月にかけ、1面で現状と課題を探った2部構成、計10回の連載。
第1部は、行政の視点から防災司令塔の役場、避難所となる学校、幹線国道などを取りあげた。
紀南の中心、田辺市の市庁舎は、建物が古いうえ、海岸から200メートル、標高6メートル足らず。潮岬の付け根、串本町の役場は標高3メートル弱だ。大震災の津波は10メートルを超えた。串本町では高台に新病院や消防防災センターを建設するなど対策を進めているが、役場の移転も検討課題になる。
大震災当日、避難者150人を受け入れた田辺市内の小学校には自家発電装置がなかった。夜間の避難に備え誘導灯も必要だ。他の学校からも、高齢者用の車いすや通信手段の確保などの要望が出ている。紀南の海岸沿いを走る国道42号線で、205の橋の6割は標高10メートル以下。寸断された際の孤立地対策も急務だ。
第2部は、住民の視点で地域と学校の連携、災害弱者の支援、観光地の対応がテーマ。
田辺市では6月、幼稚園、保育所、小学校、看護専門学校が参加した合同避難訓練が行われ、看護専門学校の生徒は園児を守りつつ高台に走った。町内会が行う地区の防災訓練に小学校や保育所が参加する計画もある。
「地震は揺れを感じることができるが、水の音は聞こえないから津波が心配」と語るのは、田辺市聴覚障害者協会の北武尚会長。聴覚障害者の住所マップ作りや防災訓練への参加を考えている。
「東南海・南海地震はいつ起きてもおかしくない。大震災を『わがこと』として受け止め、身の回りの防災を見直すきっかけになれば」と川本敦史報道部長。20~30代の9記者が担当。(審査室)