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2011年 8月9日
「地震と津波」を再認識
北羽「地域の危機管理 3・11東日本大震災を教訓に」
28年前の「あの日」と同じく晴れ渡った県民防災の日の5月26日、秋田県能代市の能代公園に避難用リュックを背負った周辺の住民たちが次々と集まった。公園北側の急坂を手を引かれて上る年配の女性。「よいでねな(容易でない)」と息を切らしながら歩みを進める。
1983年の日本海中部地震で、能代山本地区では計55人が波にのまれた。「日本海側に津波は来ない」という偏見が半ば常識になっていただけに、津波の恐怖を人々に植え付けた。だが四半世紀以上が経過して、日本海中部地震の教訓も風化が進み、あの日を知らない世代が増えている。
6月に17回にわたり1面で展開した連載は、東日本大震災を契機に、大地震、津波の備えはどうなっているのかと、地域の危機管理を検証した。
岩手県宮古市田老にある「万里の長城」と呼ばれた高さ10メートル、総延長2.4キロの巨大な防潮堤は今回の大津波にはまったく無力だった。「防潮堤は津波を完全に防ぐことはできない」という教訓からは、津波予報の充実や防災教育、防災のまちづくりといったソフト面と、施設や設備などハード面の対策を組み合わせて危機に対処する必要性を再確認させた。
県の地域防災計画では男鹿半島以南で発生する地震規模の想定はマグニチュード(M)7.7が妥当とされているが、M9.0の巨大地震を日本海側でも想定するのか、検討を迫られている。
また連載は、火災を想定したマニュアルはあっても、震災のマニュアルがない介護施設が多いこと、地震の揺れによる地盤の崩壊や液状化現象への対策が軽視されてきたことに警鐘を鳴らす。
「日本海中部地震の経験則を改め、地域防災の在り方を考えていく必要がある」と伊藤仁・報道部長は指摘する。同部長と5人の記者が執筆した。(審査室)