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2011年 8月23日
予想外の展開、克明に検証
神奈川「知事誕生2011」
4月10日投開票の神奈川知事選は、元テレビキャスターの黒岩祐治氏が圧勝し初当選した。3選確実と見られていた現職の松沢成文氏が都知事選への転身を表明したことで混迷、知事など思ってもいなかった黒岩氏が担ぎ出される想定外の展開だった。その舞台裏を4月末から7月上旬まで50回の連載で検証した。
進退を明かしていなかった松沢氏に2月中旬、石原慎太郎都知事から「俺の後は、お前しかいない」と電話がかかった。22日夜には、埼玉の上田清司、千葉の森田健作知事を加えた4知事が都内で密会し松沢氏応援で一致、松沢氏は転身を決断した。
しかし3月10日夜、森喜朗元首相と石原伸晃自民党幹事長が石原都知事とともに国会近くのホテルで、世論調査を基に「あなたでは東国原(英夫・前宮崎県知事)に勝てない」と出馬断念を促す。松沢氏は「政治家同士の約束」と反発するが、11日昼に石原氏から「すまん。これしかなかったんだ」と電話があり、石原氏は都議会で4選出馬を表明する。直後に大震災が発生、松沢氏は断念する。
松沢氏の転身で始められた後継選びでは、柔道金メダルの山下泰裕氏や女性音楽家なども挙がったが、最終的に黒岩氏の知名度が買われた。黒岩氏は大震災下での出馬要請に「天命」を感じ、「みんなが支えてくれれば」との条件に民主、自民、公明3党が相乗りした。看板政策に太陽光発電普及を掲げた新知事は4月25日、電気自動車で初登庁する。
連載は松沢氏の転身→断念から候補者選び、新知事誕生までの紆余(うよ)曲折を詳細に伝えて読ませる。担当した渋谷文彦記者は「私も当初は松沢3選と思っていた。わからなかった点が多く、検証が必要と考え再取材を重ねた。首長選ではとかく報道が利用される面があるので、事実を示したかった」という。(審査室)