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2011年 8月30日
被災地の教訓、地元と重ねる
高知「震2011年から『高知その日』へ」
マグニチュード8の昭和南海地震から今年で65年目。次に発生する確率は30年以内に60%、規模はさらに大きくなると予測される。いま起きたらどうなるのか。その日に備えて何ができるか。東日本大震災の被災地を丹念に歩き、その教訓を高知の今と重ね合わせる。
1面連載の第1部は「奪う波」(7・8月11回)。津波に焦点を当て、東北各地の被害と高知県沿岸部の現状を引き比べた。3月11日、岩手県陸前高田市を襲った津波は海岸から1.2キロの市役所でも11メートル以上。3階建て庁舎の最上階まで貫き60人が犠牲になった。千キロも離れた高知県須崎市も3.2メートル。住宅の床上に浸水した。
陸前高田市の消防団分団長が目の当たりにした津波は想像していた数十倍の高さ。須崎市でも南海地震では同様の大津波に襲われかねない。市は海抜9メートルとしてきた避難所指定の目安を20メートルに引き上げる方針だ。現在の避難所の半分以上が「不適合」になる。
宮城県石巻市の北上川では河口から50キロまで津波が遡上(そじょう)。6キロ地点でも集落をのみ込んだ。高知県の四万十川でもこの日、9.5キロ上流まで津波を確認。北上川同様に勾配が緩いその流域も安閑としてはいられない。
津波到達が最も早いとされる室戸市の保育園は7月、避難訓練を実施。海抜13メートルの避難先には制限時間内に着いた。岩手、福島県では保育・幼稚園の管理下で死者はない。だが母親は「保育士さんはたくさんの子に目が行き届くろうか」と心配する。独居高齢者が多い安芸市の民生委員も避難の際「とても手が回らん」と漏らす。
「必ずやってくる地震にどう対応すればいいのか考えたい」と浜田成和・社会部副部長。大震災発生後延べ22人もの記者を東北に派遣、取材してきた。1部は大山泰志、浜崎達朗記者が担当。2部は激震被害をテーマに9月掲載予定。年内に4部まで続ける。(審査室)