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2011年 9月6日
福祉で支える累犯障害者
長崎「居場所を探して」
「累犯障害者」。知的または精神の障害があって万引きなど軽微な犯罪を繰り返す人。釈放されても居場所がないので、結局刑務所に舞い戻る。生活困窮時のセーフティーネットは生活保護だが、刑務所もセーフティーネットになっているという現実。どうすればいいのか。あまり知られていない社会の暗部に照明を当てる意欲的な年間企画である。第1部は「福祉との出会い」(7、8月10回)。
なぜ犯罪を繰り返すのか、まず60歳の在日朝鮮人の男性に密着した。10代の頃から盗んでは捕まり出所してはまた盗む、の繰り返し。服役は11回、人生の半分は刑務所である。佐賀県の寒村の生まれ。両親は読み書きができず、小学校は特殊学級。「チョーセン」とののしられ石をぶつけられた。工場や工事現場で働いたが「何でこんなこともできないんだ」と小突かれ、池に落とされたことも。仕事は長続きせず、生きるために盗むしかなかった。よく神社でさい銭やお供え物を盗った。刑務所に着替えやお菓子を差し入れてくれた母が亡くなった時、独房で布団をかぶって泣いた。
失意の男性に「長崎県地域生活定着支援センター」の名刺を持ったスーツの男、伊豆丸剛史が面会に来た。男性に知能テストをするとIQは小学校の低学年並みで、質問しても的外れな答え。福祉の支援を申し出ると男性は「福祉ってなんですか」。伊豆丸は「あなたを支えますから」と答えながら胸が熱くなった。男性は療育手帳を初めて取得。障害の程度は「Aの2」、4段階中2番目の重度だった。今、五島市の障害者向けグループホームで暮らす。森永玲報道部長は「長崎県で累犯障害者を福祉で支える先進的な試みが続いており、この挑戦を応援し読者に報告していきたい」。北川亮、後藤洋平、荒木竜樹の3記者が第1部を担当した。(審査室)