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2011年 11月29日
山の恵み守りたい
山形「環(わ)の道標(みちしるべ)」
かつて里と山はひと続きだった。人為的な営みと自然の力は絶妙な均衡を保ち、大きな循環を成していた。だが今、その「環」に異変が生じている。そこで今年の年間企画の1面連載で、森や里山とのつながりを見つめ直してみた。
第1部「白い森に魅せられて」(1月、5回)には、山形県小国町で森と関わって生きる道を選んだUターン、Iターン実践者が登場。スギ間伐材を100%使用した木質ペレット燃料でエネルギーの地産地消を進め、森の改善に取り組むUターン組。高齢化が進む林業の世界に飛び込んだ大手材木商社からの転職者。飯豊山系の古老たちから学んだ手技で風合い豊かなつる細工を生み出す女性工芸家など、森を守り、森から学び、森との絆を強める姿が浮かぶ。
第2部「里山の危機」(5月、5回)は、自然が急速に豊かさを失いつつあり、深く、目に付きにくいところで進行していく危機を指摘した。
第3部「原風景に潜む変化」(9、10月、6回)で取り上げた鶴岡市大山の上池・下池は、コハクチョウなどの「水鳥の楽園」として県内で初めてラムサール条約に登録された。二十数年前、気候変動による自然環境の〝再生〝で、越冬に適した状況が生まれたが、先人が造り、地元住民が守ってきた水辺を取り巻く状況は一変した。「日本の棚田百選」に認定された大蔵村の「四ケ村の棚田」も、後継者不足など「農村の疲弊」から崩壊の危険性をはらむなど、自然は「消失」「崩壊」と隣り合わせで時を重ねている。
最終章の第4部では、人と森との不均衡が及ぼす野生動物の異変に焦点を当てる。
「山の恵みを守るすべを読者と一緒に考えたい」と連載の狙いを語る報道部の保科裕之副部長をキャップに、6人の記者・写真記者が担当。(審査室)