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2011年 12月20日
節電で脚光、畳文化復活を
熊本日日「岐路に立つイ草」
イ草で編んだ「寝ござ」がこの夏、人気だった。ごろっと横になるとき使う。「こんなに涼しいとは」と称賛の声が熊本県のアンテナショップ「銀座熊本館」に寄せられた。6、7月に開催したイ草フェアで255枚(昨年93枚)も売れた。熊本ではなじみが深いが、全国には未知。節電で脚光を浴びた。イ草や畳は「天然のエアコン」である。
イ草生産の9割以上は八代地方が占めるが、住宅から和室が減ってじり貧状態が続いてきた。世界で日本だけの畳文化はどうなるのか。8月の第1部(8回)は歴史を振り返った。イ草は「青いダイヤ」と呼ばれ実入りが良かったのは高度経済成長期。生産のピークは1990年頃で、1年中朝から晩までほこりにまみれてゴザ打ちが続くが、織れば織るだけ金になった。御殿も建ったが、97年に価格が暴落。八代でも借金で10人以上が自ら命を絶った。第2部(13回)は流通の課題やひずみを追った。宮城県石巻市の鹿妻小体育館は大震災の避難所。4月、八代市などが半畳の置き畳千枚を贈った。体育館の中も重油やヘドロの臭いが充満し、粉じんも舞って消灯後はあちこちでせきが聞こえた。被災者はイ草の匂いに「救われる思いでした」。咳はその夜から激減した。
畳は広島の「備後表」が高級畳表の代名詞。しかし備後表の9割以上は八代のイ草を八代で織った「八代産」という不思議。安い中国産に対抗し熊本県が開発した優良品種「ひのみどり」だが、海賊版が中国から密輸入され、国産表示で流通する。寝ござは第3部(13回)「復活への糸口」で紹介。韓国・慶州へ飛びオンドルと畳を比べた。
林茂八代支社長をキャップに和田毅、渡辺哲也、長野希美各記者が担当。林支社長は25年前、八代でイ草の取材をし「日本の気候風土に適した畳を復活させたい」。(審査室)