2012年 2月7日
復興、沿岸部の人々と

岩手日日「きずな 共に前へ」

東日本大震災からの復興へ向け少しずつ歩みは進む。社会生活を止めた未曽有の災害は、人々の価値観を問い直し、命の尊さや人のぬくもりにあらためて思いを至らせるきっかけにもなった。

元日付の特集から開始した1面連載は、震災をきっかけに強まった夫婦、家族、友人、職場、地域などさまざまな〝絆〝を見つめ直す。

岩手県一関市で飲食店を営む西城政巳さん(58)、のり子さん(53)夫妻は、宮城県気仙沼湾近くにあった店と自宅を津波で失った。28年前に1年間だけ住んだ縁で花泉町に空き店舗を借り受け、津波にさらわれることなく残った店の看板をもう一度掲げた。新生「イザカヤ東京食堂」の開店に、地元の人々は励ましの声を掛けてくれ、自然体で地域に溶け込めた。

奥州市前沢区の金属加工会社は震災後、津波被害を逃れた大槌工場を一時避難所として開放、住宅を流出した従業員や家族、地域住民を受け入れ、共同生活できる環境を提供した。本社がある前沢工場では、内定を取り消された沿岸地域の6人を新規採用し、被災地雇用にも手を差し伸べた。

津波で酒蔵や社屋を失った陸前高田市の酔仙酒造は一関市千厩町(せんまやちょう)の千厩酒のくら交流施設にある酒蔵で操業を再開し、昨年10月に被災後初めて仕込んだ酒を出荷した。7人の仲間を失った悲しみを乗り越え、慣れない新天地で懸命に酒造りを行った従業員からは笑顔がこぼれ、活気が戻る。

被災者支援と被災地復興支援の拠点として昨年9月、北上市に設置された「きたかみ復興ステーション」は、地域コミュニティーの絆を強める場として広がりをみせる。

「沿岸部の被災地からの移住者と内陸部の住民が一緒に頑張る姿を発信していく」と千葉繁報道部長。同部と支社局の記者が担当。1月8日付から日曜日掲載で、3月11日まで続く。(審査室)

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