2012年 3月6日
先端から見えるふるさと

北國「1番ものがたり」

東京・自由が丘に人気洋菓子店を持つ世界一のパティシエ、辻口博啓氏(石川県七尾市出身)、落語界の東の横綱・立川志の輔氏(富山県新湊市出身)……。両県が生んだその世界の「1番」を紹介するシリーズ。まず元日から1面で「人物編」がスタート、途中から社会面で2月末までに計12人を取り上げた。

人物に密着するのはもちろん、北陸の風土との関わりにも目配りしたのが特徴。正月「いの一番」で登場した辻口氏は、洋菓子のワールドカップで頂点を極めたが、今も石川産の食材にこだわり、4月には金沢市内に開校する製菓専門学校の校長に就く。「ルーツを大事にしないとブランドは生まれない」と語る。

江戸っ子の粋が理解できない地方出身者は大成しないとされる落語界にあって、「コツコツと1円でも多く貯蓄する人のどこが悪いのか」と、富山県人目線で古典落語の垣根を低くした志の輔氏。恋愛小説の名手、唯川恵氏は、35歳になる直前、小説家になろうと金沢から上京した、その時の葛藤が作品に生きる。

滝田洋二郎監督(富山県高岡市出身)の米アカデミー賞作品「おくりびと」の生死観は、北陸の「土着の心」と深いところでつながっている。

調教師、ジャズ界の重鎮、人気放送作家ら、東京などで活躍する著名人に、地元在住の杜氏(とうじ)や古典芸能家を交え、バランスの取れた人選。大リーガー・松井秀喜選手(石川県能美市出身)は日常英会話に不自由せず、友人の俳優、リチャード・ギアと長時間話し込む、といった意外性のあるエピソードも隠し味になった。

「山が高ければ裾野は広い。人や産業も同じ。先端から見えるふるさとの風土や文化を浮き彫りにできれば」と田中則男編集局次長。「人物編」の後は「産業編」の予定。編集局の総力で「地元を元気にする企画」を目指す。(審査室)

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