2012年 5月1日
専門家が不安に答える

長崎「低線量被ばく 長崎大と福島」

被爆の研究では蓄積がある長崎大学の専門家に取材し、低線量被ばくの不安に答えようと試みた。3月に8回連載。

長崎大から福島県の放射線健康リスク管理アドバイザーに招かれた山下俊一氏は、一度に100ミリシーベルト以上の放射線を浴びなければ「大丈夫」と明るく語り続けて、ネットでバッシングされた。第1回はそのいきさつを書いて健康不安は「100ミリシーベルトがキーワード」の見出し。なぜ100なのか、広島・長崎の原爆被爆者に多発した急性の脱毛や下痢は高線量被ばくで発生したDNAの損傷に、修復が追い付かなかったからだ。どの程度の放射線でどのぐらいDNAが傷つくのか、修復能力はどうなのか、第4、5回で鈴木啓司准教授の実験を紹介した。250ミリシーベルトの放射線を細胞に当てると、DNAの傷を示す赤い斑点は1時間後に最多となり、その後傷の修復が進んで斑点が減っていく。しかし、24時間後でも放射線を当てる前より斑点はわずかに多い。修復が追い付かないのである。だが、100ミリシーベルトならほぼ全ての傷が修復される。時間の経過で斑点が消えていく写真4枚も掲載した。福島の浪江、川俣、飯館3町村の1万人が受けた外部被ばくは最大で23ミリシーベルトだから「傷ができても随時修復が入っていく」と鈴木准教授は言う。インド南部では年間自然放射線量が162.7ミリシーベルトに達する地域もあるが、発がんリスクが高いわけではない。しかし福島県立医大の菊地臣一理事長の言葉「いくら科学的な情報を提供しても、心は科学で納得できるものではない」にも留意を求めた。

山田貴己報道部次長と向井真樹記者が担当。山田次長は「がれきの受け入れをめぐり低線量被ばくの影響に関心が集まっていたのでタイムリーと考えた」と言う。(審査室)

ページの先頭へ