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2012年 5月29日
心に刻まれた光景を写真で
岩手日報「いとしき日々」
あの日。岩手県沿岸部は「黒い波」に押し流され、懐かしの街並みは消えてしまった。しかし地域に受け継がれてきた祭りや行事、習わし、そして平穏な日常は、いつか必ずよみがえる。心に刻まれた沿岸12市町村の「いとしき日々」を、写真グラフで構成した企画として4月に12回、特集面で連載した。
1回目を飾った写真は2006年1月8日に陸前高田市の市民会館で開かれた成人式の模様。新成人の代表は「陸前高田をより活発に変えていきたい」と誓った。希望に満ちたあの日から6年。同市は未曽有の危機にひんしているが、ふるさとを思う若者の情熱は変わらない。
海とともに歩んできた三陸・大船渡市。01年に旧三陸町と合併する以前の旧大船渡地域では、海を舞台にした数々の催しが行われ、浜の活気を発信してきた。「三陸・大船渡夏祭り」は海上七夕船や花火が海面を彩る。昨年は中止されたまつりの今年の再開に関係者は動く。壊れた岸壁の向こうに広がる未来を支える子どもたちのためにも。
釜石市では震災前年まで21回の歴史を重ねたトライアスロン国際大会の復活を、大槌町では秋を彩る恒例行事の鮭(さけ)三大祭りの再開を願う。
最終回は久慈市、洋野町。津波で全壊し14年度の再開を目指す地下水族科学館もぐらんぴあ。たくさんの魚が頭上を行き交う人気のトンネル水槽では見学客の笑顔が広がっていた。冬の風物詩・新巻ザケ作りや、真夏の日差しの下で伝統のかすりはんてん姿で素潜り漁を実演する海女たちのシーンなど、地域の「ありし日」を伝えた。
「津波で失われた地域の光景、景色を取り戻してもらい復興の一助となれば」と語る菅原智広報道部第二部長。掲載した写真は、沿岸6支局に支局長や記者として勤務した経験者がえりすぐった。(審査室)