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2012年 6月5日
国の制度矛盾、現場から追及

高知「公(おおやけ)の群像―平成の市町村職員たち」

「私ら家も仕事も失って収入ゼロ。なのに、おんなじ被災者でも、公務員だけはちゃんと給料もらえんだからね。やっぱり、いい身分だよ」。昨年、東北の被災地を回った須賀仁嗣編集委員は避難所で再三耳にして、住民に最も身近な公務員でもこう見られているのかと複雑な思いにとらわれた。本当にいい身分なのか、高知で実像を追った。

第一部「メンタルダウン」はうつ病を取り上げた。公務員は休職後3年間、無収入にならない。民間より恵まれているが、労基法の精神に照らせばこっちが「まとも」と指摘する。第二部の「生保という仕事」は考えさせられる。生活保護のケースワーカー1年目の元気な女性に同行取材する。百世帯を受け持ち何しろ多忙。受給者が亡くなり親族に連絡すると「縁を切ってます」。やむなく簡素な葬儀を出す。入院して金銭管理ができない人も多く、「これが結構、大変ながですよ」。なぜ受給者は増えるのか。例えば地方選挙になると特定政党の議員が受給希望者を引率して申請にくる。票になるからだが、現場はそれを苦々しく見ている。生活保護者は特別公務員という声も。保護費の支給日を「“お給料日”と言い合ってますから」。パートで働いても保護費以下の収入で生活する人は複雑な気持ちだろう。勤勉の美風はどこへ。公務員を描きながら、現実をざらっとした感触で示す。

第三部「家路は遠く」。仁淀川町の職員161人中町外居住は42人。同町から給料をもらいながら、住民税も固定資産税も軽自動車税も別の自治体に納める。それで「若者の定住促進」なんて矛盾だ。議会は町内居住を強く要望する議決をした。意表を突くエピソードに、ベテラン記者の蓄積が生きている。須賀編集委員は「現場は国の制度の矛盾や社会の断層と向き合っている。そこで呻吟(しんぎん)する職員を応援したい」。(審査室)

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