2008年 1月15日
激動への備え求める

在京6紙の新年号紙面
環境問題、各紙が企画

ねじれ国会や大連立騒動の波を浴びながら、ネズミ年を迎えた。在京各紙の元日紙面には、手詰まりの政治状況を打開し、国民本位の政策を求める論調が並んだ。今月から温室効果ガス削減に向けた京都議定書の約束期間が始まり、七月の北海道洞爺湖サミットでは環境問題が中心テーマとなる。環境企画が目立ち、八月八日開幕の北京五輪の特集も多かった。

独自ダネ4紙 連載2紙

【1面トップ】毎日、読売、産経、東京が独自ニュースで飾り、朝日、日経が連載企画を置いた。

毎日 「久間氏1億円受領 知人から『賃借関係』 無担保、非公開」。久間章生元防衛相が二〇〇六年、福井県敦賀市の知人から一億円を受領していたことがわかった。賃借関係としているが無担保で、久間氏が防衛庁長官就任後の資産公開でも一億円は記載されておらず、大臣規範に抵触する疑いがある。久間氏は、実質は自身が取締役の会社の借金なのでいいと判断したと弁明しているという。

読売 「普天間代替 沖へ90メートル 政府が譲歩方針」。沖縄県名護市のキャンプ・シュワブ沿岸部に建設予定の米海兵隊普天間飛行場代替施設を、日米両政府が合意した案より沖へ九十メートル程度移動する修正を行う方針を政府が固めた。騒音や事故の際の危険性を低減するため、県や市が求めていた滑走路の沖合移動について、政府が一定譲歩した。停滞している移設問題が動き出す可能性が出てきた。

産経 「日本、メコン東西回廊に2000万ドル 〝南進〟中国に対抗」。十六日に初めて開かれる日本・メコン外相会議で日本政府は、メコン地域五カ国(タイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、ラオス)を横断する東西回廊の物流網整備に二千万ドル(約二十三億円)の無償資金協力を行うと表明する。急速な経済発展を背景に同地域に進出しつつある中国に対抗し、新たな外交攻勢をかける。

東京 「日本批判の根拠『田中上奏文』 中国側『偽物』認める見解」。一九二七年、当時の田中義一首相が対中侵略などの計画を昭和天皇に密奏したとされる文書「田中上奏文」について、中国側が偽物と認める見解を示していることがわかった。対日批判の根拠となり、日本側と真偽論争を続けてきた文書だが、両国の歴史共同研究の中で、信頼性が低いとの考えが主流になりつつある。共同研究の報告書にも反映される可能性がある。

朝日 連載「環境元年」。各地からの異変報告で第1部「エコ・ウオーズ」は始まる。沖縄などでしか収穫できないとされてきた島バナナが熊本県天草市で実り、福島市のリンゴ園では十二月になっても大量の「ふじ」が色づかなかった。九州では暑いのに日照不足で、コメの品質低下が止まらない。蚊が媒介する熱帯病「チクングニヤ熱」の脅威が日本に迫る。スーダンの紛争地、ダルフールでは砂漠の拡大。「環境」を巡るせめぎ合いを追う。

日経 連載「YEN漂流 縮む日本」。「これは迷い沈みつつある国と通貨の物語である」と銘打った。サハリンの日本食レストラン経営者は、円安・ルーブル高で購買力が低下した日本人を見て、時の流れを実感する。インドからIT技術者を招こうとしても、円が弱く給料も渋く人材派遣先として敬遠される日本。百年前、物価高の英国での夏目漱石の嘆きが、再び現実になりつつある。

混迷からの回復、政治に注文

【社説・論説】政治へ注文が噴出した。

朝日 「歴史に刻む総選挙の年に 平成20年の意味」。大連立騒ぎによって「政治が重い宿題を負わされたことは間違いない」とし、与野党の政策すり合わせが簡単でない以上、「ここは衆参の1勝1敗を踏まえて、改めて総選挙に問うしかあるまい。政権選択の、いわば決勝戦である」と主張した。今秋の大統領選で「ブッシュの時代」に終わりを告げる米国はじめ、激動する世界は「待ってはくれない」と説き、「世界の中の日本も曲がり角にあるが、まずは日本の沈没を防ぐため、政治の体勢を整えるしかあるまい」と論じた。

毎日 「08年を考える 責任感を取り戻そう」。「日本と世界の混迷を振り返ると、そこには共通項がある。『責任』の欠如である。『公(おおやけ)』の感覚の喪失とも言えるだろう」と、責任感の大切さを訴えた。「『公』の回復をいうなら、まず政治の『公』である。折から『ねじれ』国会である。だが、その弊害を大連立で解消しようというのは賛成できない。『不都合な真実』かもしれないが、これも民意だからだ。ねじれの解消も民意、つまり選挙にゆだねるべきだ」。

読売 「多極化世界への変動に備えよ 外交力に必要な国内体制の再構築」。「新たな『極』となりつつある中国との関係が、外交政策上、もっとも難しい重要な課題となるだろう」とし、だからこそ日米同盟の堅持、国内政治の安定が必要と強調。福田政権が強い政治意思を示すには、「新テロ特措法案に限らず、外交上、財政上、あるいは国民生活上必要な政策・法案は、憲法に定められる『3分の2』再可決条項を適用して、遅滞なく次々と断行していくべきである」、「解散・総選挙を急ぐ必要はない」と主張した。

産経 「〝危機の20年〟へ備えと覚悟」。英国の外交官E・H・カーが、第一次大戦後から第二次大戦に至る「危機の二十年」を書いたように、「平成の20年」も危機の時代と位置づけられるという。世界の指導者の顔ぶれが一新される中、福田首相も新顔ではあるが、世界の潮流に沿っているかどうかとなると、「疑念を拭(ぬぐ)い去ることができない」。ただし、「幕末」を念頭に危機意識を持つ日本人は多く、「日本はまだまだ希望がある」と分析。ヒマラヤの麓(ふもと)の小国、ブータンの「覚悟の国家戦略」が日本にも必要で、「ブッシュ後に備えた対米関係の構築」が最優先課題と強調した。

東京 「『反貧困』に希望が見える 年のはじめに考える」。「貧困問題に向き合い、若年層への有効な手だてを講じないかぎり、日本の未来が語れません。昨年暮れ、東京にワーキングプアの若者たちの小さな互助会組織が生まれました」で書き出し、「耐えるだけでなく、不正や理不尽な扱いには抗議の声を上げ、時には法律を武器にした法廷での闘いも必要でしょう」と展開。「未来を担う世代を育てるのは国の最重要任務」とした上で「消費税増税をいう前に政府・行政には信頼の回復など為(な)すべき多くのことがあるはずです」と主張した。

日経 「低炭素社会への道 国益と地球益を満たす制度設計を」。「底の見えぬ不安は経済を萎縮させ政治を迷走させる。しかし、そのリスク評価と回避の道筋が科学的に確定すれば、もはやそれは不安ではなく、解決可能な命題となる。気候変動、地球温暖化はまさしくそれにあたる」とし、ことし京都議定書の第一約束期間を迎えることを強調。洞爺湖サミットの議長国として、日本は覚悟と政策能力を試されるとしつつ、「京都議定書から十年、制度設計に背を向けてきた日本は、特殊な国というレッテルをはられつつある」と懸念した。

温暖化の危機、中心に据え

【連載・企画】 朝日一面「環境元年 第1部『エコ・ウオーズ』」、社会面「ニセモノ社会」▽毎日一面「暖かな破局 第2部『地球からの警告』」、社会面「ふるさとはどこですか第2回」▽読売一面「日本の知力 第1部『最前線で考える』」(三日から)、社会面「いろはにホホホ」(同)▽日経一面「YEN漂流 縮む日本」、社会面「懸け橋の向こうに(北京五輪関連) 第1部」▽産経一面「生きもの異変 温暖化の足音」(三日から)、社会面「まち語り もの語り」▽東京一面「地球発熱 第1部『備える』」、社会面「結(ゆ)いの心 市場原理と山里」。

ページ数

かっこ内の数字は2007、06年の順。

朝日96(100、100)▽毎日88(88、88)▽読売112(108、108)▽日経116(116、116)▽産経80(100、92)▽東京70(72、72)  (審査室)

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