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2008年 2月12日
真摯な政策論議望む
三月末で期限が切れる道路特定財源のガソリン税などの暫定税率をめぐって混乱していた国会は一月三十日、期限を二か月延長する与党の「つなぎ法案」が午前の衆院委員会で可決後、午後になって一転、与野党が「年度内に一定の結論を得る」とする衆参両院議長のあっせんを受け入れ、与党は同法案を撤回した。与野党の合意を受け、三十八本の社・論説がねじれ国会での審議のあり方などを論じた。
与野党とも「暴挙」に責任
〈言論の府〉中日・東京「言論の府としての良識がぎりぎりのところで働いたようだ。(略)今回の騒動の根本は、国会がねじれ状態になって半年余になるにもかかわらず、新たな審議ルールができていないことにある。国会を壊しかねなかった今回の騒ぎを教訓に、議会制民主主義を成熟させていくのが、与野党の緊急課題だ」、京都「そもそもつなぎ法案は本体法案(租税特別措置法改正案)の議論を始める前に手続き的に結論を決めてしまうという点で国会をないがしろにした奇策というしかない。野党がこれを『暴挙』(小沢一郎民主党代表)と反対するのは当然だが、最初から期限切れに持ち込むことを公言してこの暴挙を招いたのは野党であり、いわば同罪だ」、北海道「国民が望むのは与野党による真摯(しんし)な政策論議だ。論戦を通じ道路特定財源や暫定税率といった耳慣れない制度の理解を深め、自分の意見を形成する。それを国会論議に反映させ、キャッチボールの末に国民的な合意づくりを助けていくことが、国会の本来的な機能だろう。与野党が政局先行で力任せに衝突するだけでは、この期待に到底応えられない」。
〈年度内に結論を〉産経「予算案や歳入関連法案について、審議を尽くし、一定の時期が来れば結論を出す。合意事項はしごく当然の内容だが、衆参ねじれ現象の下で、国政に責任を持つ与野党が基本原則としてあらためて確立すべきである」、茨城・長崎など「意見の異なるテーマに関して、それぞれの主張の正当性が国民に分かるよう徹底的に議論する。一定の審議時間が経過すれば採決をして、院としての結論を明確に示す。その過程でより良い案にするため修正協議を行う。議会制民主主義の基本だろう」、読売「議長斡旋(あっせん)の核心は、『(略)年度内に一定の結論を得るものとする』という点にある。民主党の鳩山幹事長は、年度内の法案採決を『確約したものではない』と述べている。しかし、河野衆院議長も、民主党出身の江田参院議長も、合同記者会見で、『議会である以上、賛否を決めることだ』と明言し、参院が年度内に議了・採決することを確認している。斡旋内容を確実に履行することは、各政党の〝義務〟となっている」。
〈修正〉毎日「与野党ともに重視すべきは『国会修正』の合意である。(略)成立か廃案かの二者択一ではない。少しでもよい案に与野党で修正していくことこそが、ねじれ国会に求められているのだ。今回の合意を『議論する国会』『修正する国会』への第一歩とすべきだと考える」、朝日「与野党はこれを糸口に、修正案づくりを真剣に追求すべきだ。衆院で与党が握る多数が民意に基づくように、参院での野党多数も民意に支えられている。そのふたつの民意をつき合わせ、年度末までに成案をつくってこそ、『ねじれ』に託した有権者の期待に応えることになるのではないか」、琉球「『ねじれ国会』にあっては、与野党双方が知恵を出し合うことが本来の在り方である。(略)民主党は(道路特定財源を)道路整備以外に使える一般財源にするべきだとしている。政府与党は今後十年間の道路整備計画のために特定財源を確保し、暫定税率も十年間延長するべきだと主張している。修正協議を積み重ねることで、より良い案を模索することが求められる」。
特定財源の是非 検証を
〈徹底審議〉東奥「道路特定財源の必要性について与野党は、じっくりと審議を尽くしていくべきだ。道路整備以外に使える一般財源にすべきなのか。道路整備計画は妥当なのか。論点は多いはずだ。『ガソリン国会』などと、対立をあおるだけでは国民も納得しまい」、西日本「わが国は今、高齢化に伴う社会保障費増大などで厳しい財政状況に直面しており、国・地方を合わせた長期債務は八百兆円近くに達している。そんな状況なのに、使途を道路整備に限った特定財源と暫定税率を維持することが果たして妥当なことなのか。政府は今後十年間で道路整備に五十九兆円もの巨費を投じる計画だが、そこに無駄はないのか。徹底的に検証すべきだ」、日経「与野党は徹底的に議論して、道路特定財源の抜本改革に踏み込む時である。(略)与党と民主党のどちらの政策に説得力があるのか。有権者が厳しく見つめていることを忘れてはならない」。(審査室)