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2008年 3月18日
権力二重構造に不安
ロシア大統領選で、プーチン大統領に後継指名されていたメドベージェフ第一副首相(42)が圧勝した。五月に就任、プーチン氏は首相として残る。大国ロシアに安定を取り戻し、経済的発展を遂げた八年間のプーチン政権に国民の支持は高い。一方で強権・独裁的な政治手法には強い批判もある。ロシア語でクマの意味があるメドベージェフ氏の新しい政権の「不安と期待」を三十七本の社・論説が取り上げた。
「選挙を装った権力継承」
〈国民の選択〉徳島「得票率は70.24%とプーチン氏が二〇〇四年の再選時に獲得した71.31%とほぼ並んだ。ロシア国民がエネルギー資源を武器に安定と経済繁栄をもたらした二期八年のプーチン政権を高く評価。その路線継承を掲げるメドベージェフ氏を支持したことがうかがえる。ただ、選挙という形はとっているが、プーチン氏の一存で事実上、国のトップが決まるのは選挙を装った権力継承と言っても過言ではない」、朝日「(プーチン)大統領は連続2期までと定めている憲法を改正し、3期目を狙うのではとの見方もあった。結局、権力という自転車のペダルを2人で踏む『タンデム(2人こぎ自転車)』体制で、引き続きロシアを率いる作戦に落ち着いたようだ。そのシナリオの第1関門は無事、通過したということだろう。今回の大統領選の最大の意味はそこにある」、北海道「どん底のロシア経済を立て直し、生活を向上させたプーチン氏への国民の支持はいまなお極めて高い。プーチン氏が政権中枢に残るのならトップが代わっても安心だ―多くの人々がそう考えても不思議ではない。(略)日本で考える民主主義とはかけ離れたロシアの現状に不安は残るが、いずれにしても異例の『双頭政治』が五月から始まる」。
〈不安〉毎日「1人の実力者のもとで、ある党や候補が驚異的な票を得るのは、中東などの独裁国家の選挙を連想させる。プーチン氏の『大国への復活』路線に国民が期待する事情も分かるが、ソ連への逆戻りでは困る」、読売「メドベージェフ氏は、ほとんど選挙運動らしい運動をしてこなかった。(略)主要国の最高権力者を選ぶ選挙がシナリオ通りに進行した点で、内外に違和感が残ったのは事実だろう。これが『ロシア民主主義』の現実である。それを踏まえた上で、対ロシア政策を組み立て、関係を構築する必要があろう」、京都「後継とはいえ、権力基盤は万全ではない。メドベージェフ氏はリベラル派とされ、『シロビキ』と呼ばれる軍・治安機関出身の強硬派との関係は懸念材料だ。(略)強硬派との対立回避は当面、プーチン氏に頼らざるを得ない。人事などでどう主導権を発揮できるか。メドベージェフ氏が求心力を高めれば一転、主従逆転の権力バランスが崩れる可能性もある」、河北「ロシアは原油産出量がサウジアラビアに次いで二位、天然ガスは米国を抜いてトップの資源、エネルギー大国であり、原油はじめ原材料の高騰を背景に、その存在感は高まっている。懸念されるのは、エネルギー資源の国家管理を強め、ときに強権を発動することだ」。
〈期待〉日経「メドベージェフ氏が選挙期間中に明らかにした政策はプーチン路線の枠内に収まっている。経済の多角化を進めると訴え、外交ではコソボ独立を認めず、米国のミサイル防衛システム配備計画にも反対している。ただし、基本路線を引き継ぐ中で新味を出そうという意欲はうかがえる。(略)今のロシアでは法律が順守されていないと指摘し、この状況を変えることが重要課題だと強調してきた。自由の重要性を指摘していることにも注目したい」、上毛、静岡など「メドベージェフ氏は、ソ連末期の改革ペレストロイカの息吹を肌で感じて育った法律学者の出身だ。国家利益が民主主義に優先するとしたプーチン政権の『主権民主主義』に異議を唱え、『民主主義に形容詞は要らない』と述べた。(略)政治運営では、個人の自由や経済の自由の尊重を訴える。これが、冷却化する欧米関係はじめ現実政治にどう反映されていくのか、注視したい」。
北方領土問題への努力を
〈国際関係〉産経「7月の北海道洞爺湖サミット(主要国首脳会議)は、若いクマの本格的な首脳外交の初舞台となる。ここでプーチン政権とは異なる新政権の独自色を示す絶好の機会だ。北方領土問題の解決のためにもロシアが隣人たちに新しい顔を見せるときである」、中日・東京「ロシアからは昨年、フラトコフ首相(当時)のほか閣僚級の要人が延べ十人も来日した。例年、一人か二人なのと比べると格段に多い。ロシアは対日重視に転じた。これは欧米との関係悪化、頭打ちの対中関係と無関係な動きではない。福田康夫首相はプーチン氏の招請を受けて訪ロを検討中だ。対日接近の機運をとらえて、北方領土問題が前進するよう努力してほしい」。(審査室)