2008年 4月8日
衆院再可決には賛否

ガソリン税などの暫定税率が、与野党対立が解けぬまま〇七年度末で期限切れとなり失効した。福田首相は三月二十七日、道路特定財源を〇九年度から全額一般財源化するとの新提案を示したが、暫定税率即時廃止を主張する民主党は応じなかった。与党側は四月末にも衆院で再可決して暫定税率を復活させる構えだが、民主党は対決姿勢を崩していない。政治の責任や今後について論じた一、二日付五十本の社・論説から。

「ねじれ国会」の対立深刻

〈機能不全〉河北「道路特定財源の存続に固執し続けた与党の民意とのずれ、不足する地方の歳入補填(ほてん)の財源を示しきれない民主党の非力さ、土壇場になって全額一般財源化を提案した福田首相の政治センスの欠如など、これまでにも増して信頼性を喪失した政治状況が一挙に凝縮して露見したと言えよう」、朝日「政治に対する不満は、与野党双方に向けられている。しゃにむに暫定税率の廃止に突き進み、ガソリン値下げを実現させた民主党なのに、その支持率は低迷したままだ。(略)『ねじれ国会』の行き着いたところが、こんな2大政党の機能不全であり、国民の不信だったというのは残念というよりない。この事態を両党はもっと深刻に受け止める必要がある」、毎日「『政治のツケを国民に回す結果となった』と首相が陳謝したように、ここに至った責任は第一に政府・与党側にある。(略)今のような対立が続けば国民の痛みも伴う社会保障政策の改革などは先送りされるだけだろう。与野党が『大事なことは決められない国会』から抜け出せないのなら有権者が動かすほかない」。

〈再可決を〉産経「異常事態を招いた原因は、ねじれ国会下の不毛な与野党対立で陥った政治の機能不全にある。その責めを負うべきは、理念なき政局至上主義の小沢一郎代表率いる民主党である。(略)もとより、政策協議や修正合意を経た政策の実現が望ましい。それが無理な場合、憲法に明記された衆院再議決を躊躇(ちゅうちょ)しないことが、政権を担う自民、公明両党の責任ある対応である」、読売「福田首相が、毅然(きぜん)とした政治姿勢を示すべき重大な局面である。(略)首相はこれ(再可決)をためらうべきではない。与野党の修正協議が不調に終わるなら、憲法の定める民主主義のルールに従って法案を再可決、成立させる―。こうした政治的な意思をはっきりさせておくことが肝要だ」、日経「(再可決は)財政事情などを踏まえれば当然だろう。道路特定財源が温存されないように、福田康夫首相は自ら公約した二〇〇九年度からの一般財源化の方針を閣議などできちんと決める必要がある。(略)ガソリン消費を奨励するような暫定税率の撤廃は国際社会の理解も得られない。消費者の反発は避けられないが、政府・与党は再可決をためらってはならない」。

〈合意努力を〉福井「首相が先週行った新提案に基づき歩み寄れないものか。(略)野党側と合意できる修正案づくりに努力すべきだ。このまま衆院で再議決すれば済むという問題ではない」、上毛・日本海・長崎など「これまでの国会審議で道路特定財源のさまざまな問題点が明らかになった。衆参の『ねじれ国会』によるチェック機能が働いた成果といえる。だが、再議決では政府の原案がそのまま復活し、問題点は何も改善されないことになる。それでいいはずがない。(略)与野党は首相提案をたたき台に修正協議を急ぎ、再議決を待たずに与野党合意として国会の意思を示すべきだ」、北海道「首相は将来的にも暫定税率の維持にこだわっている。野党との間で大きな隔たりがあるこの問題で、維持年限を短縮するなどもう一段柔軟な姿勢を示せば、相手側の譲歩を引き出す呼び水になるのではないか。ところが政府や与党内からは早くも『出口』を決める衆院再議決の話が出ている。もってのほかだ」、北國「与野党の修正協議を仕切り直し、妥協点を探ってほしい。たとえば暫定税率をそのまま復活させず、税率を大幅に下げて再導入するのも妥協の一案ではないか」。

「新提案」を確かなものに

〈一般財源化〉西日本「一般財源化が実現すれば、無駄が多い道路行政の抜本改革につながる。各紙世論調査を見れば、国民の多くが支持してもいる。(略)『首相の意気込み』で終わらせないためには、道路特定財源の改革案を政府・与党の方針として決定することが必要ではないか」、京都「新提案に対し、自民党内では道路族を中心に不満が漏れる。一般財源化は民主党の主張でもある。まずはこれを確かなものにすることが大事ではないか」、福島民友「一般財源化や暫定税率の廃止には、にわかに賛成し難い現実がある。与野党は今後、政局の思惑を優先させるための駆け引きではなく、地方の現実を直視した誠実な国会論議を尽くす責任がある」。(審査室)

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