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2008年 7月22日
「ポスト京都」に方向性
第三十四回主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)が七―九日の日程で開催された。今回は主要八か国に加え十四か国の首脳が参加した初の大規模サミット。焦点の地球温暖化問題で、G8首脳が「温室効果ガスの排出量を二〇五〇年までに半減する」という長期目標を掲げることで合意したことに一定の評価をしながらも、浮き彫りになった先進国と新興経済国との利害対立の解決が課題とする指摘が目立った。事前報道を含め関連する社・論説は百八十本を上回った。
各国利害の溝も浮き彫り
〈一歩前進〉朝日「期待が持てる変化は見えてきた。一つは先進国が『野心的な中期の国別総量目標』を掲げると明言したことだ。もう一つは、新興国の側も野放図に排出量をふやさないようにブレーキを踏む責任を、条件付きながら引き受けたことだ」、岩手日報「世界は地球温暖化防止という共通の目標がありながら、なかなか同じ方向に歩み出せない。かろうじて『ポスト京都』につながったのがサミットの成果ともいえる」、読売「ポスト京都議定書で最も重要なことは、中国、インドなどすべての主要排出国が参加する枠組みにすることだ。それに向け、一定の方向性が示されたともいえる」、神戸「経済成長への影響やG8各国の姿勢を見据えた現段階での最大公約数だろう。あいまいさや不満点はいくつもある。しかし、腰の重かった米国も温暖化対策の船に乗り込んだ。その事実を重くみたい」、山陽「『五〇年までに少なくとも半減』させるとの長期目標に合意したことは一定の前進といえよう。米国が消極的だった中期目標についても、『野心的な国別削減目標を実施する』ことを初めて打ち出した」。
〈国益の壁〉西日本「新興国や発展途上国が、先進国の生活水準に近づく権利を主張するのは当然である。しかし、温室効果ガスの排出割合は、新興国・発展途上国がほぼ半分を占める。今後、この割合は増え続ける。先進国だけの取り組みでは、危機を回避できないのだ」、中日・東京「地球温暖化の責任は、これまで温室効果ガスを排出してきた先進国がより重く負う。中国などが繰り返す主張自体はもっともである」、北海道「新興国などとの対話は拡大したものの、互いの利害がぶつかったのも今回のサミットだった。象徴的なのが温暖化対策に対する考え方の違いだ。(略)これをいかに調整し、新興国との協調を図るかはG8の役割と言える。地球温暖化対策は一刻の猶予も許されない課題だ」、新潟「主要経済国会合では、『五〇年までに半減』の合意さえできなかった。G8と新興国、途上国の溝の深さだけが浮き彫りになった格好だ」。
〈原油・食料高騰〉河北「地球温暖化対策が人類共生のための長期にわたる課題とすれば、世界の経済と人々の生活を安定させるための喫緊の課題は原油と食料の価格高騰対策だ。G8は『世界のインフレ圧力を高める』として『強い懸念』を表明した。が、残念ながら即効的な対策は見当たらない」、熊本「原油や食料の急騰、金融市場の混乱などで危機的状況に直面する世界経済に対する新たな処方せんも期待された。が、各国の利害や意見の違いを克服し、強いメッセージを発信するところまでは至らなかった」、日経「原油高に対しては、エネルギー効率と新技術に焦点を当てたエネルギーフォーラムを開くことになった。食料問題についても、包括的に検討する専門家グループを立ち上げる。中長期的な視点で問題に取り組む姿勢を見せたのは、サミットならではのアプローチだった」。
「拉致」を首脳宣言に明記
〈議長国・日本〉毎日「『拉致』の文言が初めて首脳宣言に明記もされた。福田首相の意向が反映されたものだろう。成果の一つと言っていい。ただ、サミットの合意文書に盛り込まれたからといって、これがどれほど北朝鮮に対する国際的圧力になるかは別問題である」、産経「首脳宣言に初めて『拉致問題』という文言が盛り込まれたが、議長国として当然だ。各国首脳が理解を示した以上、北朝鮮が動かざるを得ないほどもっと強い表現にすべきだった」、高知「洞爺湖サミットではアフリカ支援の強化で合意した。日本政府が事前会議を開催するなど力を入れてきたテーマだ。農業生産の増大は日本の貢献できる分野であり、技術、資金、さらに人材の育成、派遣の面でも約束を着実に実行に移したい」、北國「日本の対アフリカ支援は、強力な資源外交を展開する中国や、旧宗主国の欧米諸国に比べて影が薄い。豊富な地下資源をめぐる争奪戦がますます激しさを増すなか、日本が中心になった国際支援の輪が大きく広がっていくことにも意義がある」。(審査室)