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2008年 7月29日
子供にどう話すのか
大分県で発覚した教員採用をめぐる汚職事件の波紋が広がっている。六月から今月にかけ現職の小学校校長や教頭、県教育委員会幹部ら五人が贈収賄容疑で逮捕されたが、県議を含めた複数の口利きルートの存在が浮上したほか、校長や教頭への昇進試験でも金品のやり取りが明らかになった。また教員採用試験で特定の受験者の合否を国会議員秘書や県議らに個別に伝えることが全国各地の教育委員会で常態化していたことも分かった。汚職事件やその背景などを論じた七十本を超す社・論説から。
不正を固定化せぬ対応必要
〈底知れぬ腐敗〉読売「小学校教員の採用試験で、小学校長らが自らの子どもを合格させるよう県教育委員会幹部らに頼み、現金や金券をやり取りした贈収賄容疑で逮捕された。受け取った幹部の1人は、県教委で教育長に次ぐ立場の元教育審議監で、退任後も市教育長という要職にあった。ほかの逮捕者も、県教委の課長級の参事や小学校の校長、教頭だ。保護者から、『ルールを守るよう指導する人間の犯罪を子どもたちにどう説明するのか』と憤りの声が上がるのも、当然だろう」、北海道「複数の教員が、校長や教頭への昇任の謝礼として、県教委幹部に金券を渡していたことも判明した。露骨な汚職が、まかり通っていた。県議らの口利き疑惑も浮上している。腐敗の底知れなさを感じる」、西日本「収賄容疑で逮捕された県教委参事は〇七、〇八年度の小学校教員採用試験で、合格者の半数の成績を加点して水増しする一方、一部受験者の成績を減点した疑いが持たれている。(略)今回の不正で、本来は合格した人が望みを絶たれていたとしたら、言語道断だ」、神戸「驚くのは、県教委幹部の間で、数年前から不正を指示する闇のルートが出来上がっていたとされる点だ。収賄容疑で逮捕された県教委の元審議監は、有力県議の口利きで特定の受験生の点数改ざんなどを指示していたという」。
〈再試験も〉京都「(大分県教委は)不正によって合格した者の採用を取り消し、本来は合格していた受験者を教員採用する方針を決めた。不正合格者の中には、不正に全く関与せず、自分の採用の経緯を知らない人もいるに違いない。一律に解雇すれば、地位確認訴訟などにも発展しかねない。とはいえ、不正を固定化しない県教委の判断は県民にも支持されよう。一度定めた方針は、貫いてもらいたい」、中国「不正な合格者が半数近くに上ることから、採用取り消しがそのまま実施されれば、学校現場の混乱は避けられそうもない。何より子どもらへの影響が気がかりだ。(略)それぞれの事情も考え、細心の配慮を求めたい」、産経「低い点数を大幅に改竄(かいざん)し、不正に採用された者が教壇に立っている。(略)疑惑がもたれる教員には再試験も辞さないなどの対策を検討すべきだろう」。
〈便宜供与〉朝日「新たな問題も出てきた。採用の合否が受験者本人に伝えられる前に、国会議員の秘書や県議らに漏らされていたという。(略)議員や地域の有力者らにだけ特別に知らせるのは、どう考えても公正ではない。そうした便宜供与が口利きを許すことにつながり、それが今回のような事件に発展したのではないか」、毎日「大分県の教育長も昨年、複数の県議らの要請で発表直前に通知したことを認めている。(略)文部科学省の担当課は『同様の事例は聞いたことがない』と評したが、不可解だ。では、これまで入れ代わり立ち代わり全国の教育委員会に出向してきたキャリア官僚たちは何を見聞きしていたのか」。
「身内」人事に外部の目を
〈再発防止策〉中日・東京「教育関係者だけの『身内』で人事を扱っているからコネや情実がはびこるようになり、果ては金品が動くようになるのだろう。大分県教委はこの夏から教員採用試験を県人事委員会と共同で行うといった改善策を示したが、いっそのこと、県教委は採用には関与せず、第三者機関に委ねてはどうか」、大分「大分県教育界は、全国的に赤恥をかいた。(略)採用試験の思い切った不正防止システムの構築をはじめ、監督責任を果たせなかった教育委員会の大胆な見直しや〝口利き〟封じ対策―など全国のモデルケースとなれるような改革案を示してほしいものだ」、河北「生かすべき教訓の一つは、選考過程の透明性の確保だ。受験者が納得できる情報を開示しているか。密室化して担当者の相互チェックを妨げていないか。事後の検証はできるようになっているか。現行の仕組みを総点検したい」、日経「抜本的には、教委の閉鎖的な体質を変えていく必要がある。教委の事務局は地域の教職者が要職を占め、現場との癒着を招きやすい。もっと人事交流を進め、教育行政に外部の目を生かすべきだ」。(審査室)