2008年 8月19日
総選挙に向け挙党態勢

福田康夫首相が一日、内閣改造と自民党役員人事を行った。昨年九月の政権発足以来、初めての内閣改造で、閣僚十七人のうち十三人が入れ替わった。党幹事長には次の首相をめざす麻生太郎氏が起用された。党の八派閥中、六派閥のトップが閣僚や党四役入り。首相は改造内閣を「安心実現内閣」と命名したが、直後の世論調査の内閣支持率は横ばいから10ポイント以上アップまでさまざまで、改造効果は読みにくい。七十九本の社・論説が取り上げた。

衆院解散を一日も早く

〈民意問いたい〉朝日「『福田・麻生政権』である。この新体制には大きな意義がある。首相が政権を投げ出さない限り、来秋までに必ず行われる総選挙にこの陣容で臨むということだ。したがって、この新布陣の最大の仕事はそれに備えることであり、まさに『解散準備内閣』の呼称がふさわしい。(略)政治状況を打開するには、一日も早く衆院を解散し、政権の正統性を民意に問わねばならない」、毎日「低支持率にあえぐ内閣の立て直しを懸け、慎重な福田康夫首相が踏み切った人事だ。だが、首相がどんな政策を掲げ次期衆院選で民意を問いたいか、明確なメッセージが国民に伝わったとは言い難い。首相は記者会見で『衆院解散を論じるより政策の実行だ』と語った。ならば、まず、民意を問うに足る骨太な政策ビジョンを早急に示すべきである」、中日・東京「首相が何をどうしようと考えての人事断行なのか、極めてわかりにくい。(略)政治の閉塞(へいそく)状況が続けば、不幸なのは国民である。局面の打開には、速やかに国会を召集し、解散・総選挙で国民の声を聞くべきである、と私たちは考える」。

〈挙党で政策実現〉読売「人事の狙いは明確である。衆院選に向け、党、内閣を通じた挙党態勢を構築し、内政・外交の重要課題に取り組む体制を敷くことだ。(略)福田改造内閣では、民主党に協議を求める姿勢は引き続き必要だが、新テロ特措法改正案など国としての基本にかかわる重要法案は、衆院の3分の2以上の多数を使って、粛々と再可決、成立させていく覚悟が肝要だ」、日経「麻生氏の幹事長起用は公明党との関係改善への布石でもある。選挙を考えれば、自民党にとって公明党との協力関係維持は至上命題だろう。同時に、日本として必要な国際貢献活動を継続させるのは与党の責任であることを忘れてはなるまい」、産経「ポスト福田の最有力候補を取り込んだことで、次期衆院選で民主党と政権の座を争う自民党の態勢は整った。麻生氏は昨秋の自民党総裁選で福田氏に敗れたが、大都市での党員投票では麻生氏が福田氏をリードした。国民的な注目度も高い。挙党態勢確立への福田首相の覚悟も伝わってくる」。

〈路線変わるか〉岩手日報「経済財政担当相は与謝野馨氏が就く。麻生氏と並びポスト福田の一人。経済成長優先の『上げ潮派』と路線を異にする『財政再建派』の代表だ。政府の路線転換を意味するのか明確な説明がほしい」、高知「改造内閣の性格がはっきりしないのは、福田政治の目指す方向が相変わらず明確でないためでもある。福田首相は閣僚や党四役に、いわゆる『郵政造反組』を起用した。小泉改革路線によるひずみが大きくなり、与党内では転換を求める声が高まっているが、今回の人事が路線の見直しを意味するのかどうかは分からない」、信毎「見かけは大幅な改造である。しかし中身をよく見ると、無難な姿勢が目についてくる。官房長官、財務相、外相、厚生労働相ら、軸になるポストには再任組や横滑り組が目立つ。派閥の有力者をそつなく取り込み、総主流派態勢の色彩も濃い」、北海道「地味な首相に比べ個性派の麻生氏は何かと目立つ。国民の目には『福田・麻生政権』と映るのではないか。これはもろ刃の剣でもある。麻生人気が勢いを増せば党内で待望論が高まる可能性がある。与党内の『福田降ろし』が加速し、政局の混迷を招く事態も予想されよう」。

産業基盤の立て直し急務

〈国民生活優先で〉南日本「改造内閣に直視してもらいたいのは国民生活である。原油高や輸入穀物の高騰は、ガソリンや身近な食料品の価格を次々つり上げ、農業や漁業といった一次産業をはじめ、あらゆる産業の基盤を揺るがし始めた。世界の動向を踏まえた経済政策の立て直しがまずは急務だろう」、京都「内閣改造は解散・総選挙を展望した政権戦略と不可分だ。新たな陣容で、国民が生活改善を実感できる政策を確実に実行できるかどうかによって、その時期が左右されることになる。福田首相は、衆参で多数派が異なる『ねじれ国会』で野党と接点を見いだす努力をさらに重ねるべきだ」。(審査室)

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