2008年 11月4日
補助金制度の弊害も

会計検査院が任意に選んだ十二道府県の国補助事業を調査した結果、すべての自治体で架空発注による裏金づくりや補助対象外への流用などが見つかったことが十月十八日、分かった。不正経理は二〇〇六年度までの五年間で、農林水産、国土交通両省の補助金を中心に総額五億五千万円に上る。年度末に発生する剰余金を使い切ろうと、大量の事務用品を架空発注して、商品は受け取らずに、支払った代金を裏金として業者の口座にプールする「預け」という手口も発覚した。ずさんな公金管理を、四十二本の社・論説が取り上げた。

ずさん管理にあぜん

〈公金意識〉高知「不正経理による裏金づくりは一九九〇年代に全国各地で発覚、国民の怒りを買った。にもかかわらず、以降も中央省庁だけでなく地方自治体でも不正流用や不正支出の例が後を絶たない。同じことがどうしてこうも繰り返されるのか。ずさんな公金管理体質がいっこうに是正されてないわけだ」、西日本「私たち国民が支払う血税を一体、何と心得ているのか。お役所の公金意識の欠如にはあぜんとせざるを得ない。(略)『国民から預かった大切なお金だ』という当たり前の公金意識さえあれば、不正経理に手を染めることなどないはずだ」、中日・東京「(不正額が最多の愛知県は)『私的流用はなかった』と県幹部は釈明したが、公金を自分たちで勝手に使った行為は『組織的な泥棒』ではないのか。(略)公金は自分たちの金でなく、納税者から託されたものである」、秋田「公務員の感覚まひは相当深刻で、今や税金を自分たちで自由に使えるお金と勘違いしている。そう言ってもあながち的はずれではないほどだ」、福島民友「(福島県では)一九九七年に発覚した公費不正支出問題をきっかけに、公金の管理や使い方を厳しく見直したはずだ。今回の問題で(故意の)不正支出はなかったとはいえ、公金管理のゆるみや甘さを指摘せざるを得ない」。

〈いびつな制度〉毎日「無視できないのは国から地方へのヒモつき補助金という制度自体がもたらす弊害だ。補助金は使途が縛られ、余れば国に報告し減額される。それだけに、自治体は節約よりも『使い切る』ことに意識が誘導されがちだ」、読売「補助金は使途を限られた公金で、目的外の使用は許されない。だが、余ったら国の了解を得て他に回すなど、もう少し柔軟な運用を認める余地はないか。今回の問題を、補助金のあり方自体を見直す契機とすべきだ」、信毎「自治体にとって補助金が使い勝手が悪い面があることは確かだ。それならば、国と交渉して運用方法を変えていくのが筋だろう。解釈で逸脱するのは好ましいとはいえない」、岩手日報「使い切り予算の慣行を見直し、経費を節減できたら相当分を翌年度に加算する仕組みをきちんと位置づけることを検討する必要がある」。

透明性は分権化の条件

〈分権論議に冷水〉朝日「地方分権の論議では、政府の補助金は減らし、自治体が自由に使える金を増やす方向で検討が進められている。不正経理問題は、この議論に冷水を浴びせかねない。地方が税源移譲を求めても、ルール通りに税金を使えないところには渡せないと言われれば、反論はむずかしい」、産経「不正経理を助長させた背景には、国と地方のもたれ合いがある。この構図が変わっていかない限り、地方分権化の道筋など遠ざかるばかりである」、日経「自治体の裏金問題は今回が初めてではない。(略)公金の管理や使い道の透明性を高めることは、地方分権を進める最低限の条件の一つである」、新潟「補助金が目的外のところに使われていないか。惰性で続いている会計処理に不備はないか。都道府県だけでなく各市町村も足元をチェックする必要がある。単に無駄の排除というだけではなく、地方分権を見据えても不可欠な作業といえる」。

〈再発防止へ〉北海道「十二道府県のいずれでも不正経理があったことに驚く。ほかにもあるはずと思うのが普通だ。残りの都府県もしっかり調べ、調査結果を公表すべきだろう。身内による内部調査では厳しさを欠く。専門家を加えた第三者委員会をつくり、調査を委ねてはどうか」、愛媛「担当職員たちに自浄能力が欠如していると言わざるを得ない。(略)これ以上の無駄遣い防止へ、会計検査院の機能強化も急ぐべきだ」、熊本「行政の長は、外部調査などで徹底して問題点を洗い出し、監査体制を強化すべきだ。同時に、職員の意識改革にも取り組んでもらいたい」、岐阜・下野など「(実態を明らかにするため)徹底した調査が必要だ。(今回)指摘を受けていない一部の県では自主的な調査が始まったが、ほかの都府県や政令指定都市でも早急に調査すべきだ」。(審査室)

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