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2008年 11月11日
「妥当」「大いに疑問」

世界的な金融不安による景気悪化が深刻化する中、東証株価は十月二十八日にバブル後の最安値を更新した。麻生太郎首相は三十日、総額二十七兆円に及ぶ追加経済対策を発表して景気対策を最優先する考えを表明、十一月末とも見られていた衆院総選挙は当面先送りされることになった。追加対策発表前後、五十本を超える社・論説が解散先送りの是非を論じた。

政治空白の回避望ましい

〈やむを得ぬ〉日経「私たちは麻生内閣発足に際して、実質的には選挙管理内閣だと指摘し、速やかに衆院を解散して民意を問うよう求めてきた。だが未曽有の金融危機で世界の株式、為替市場が混乱し、経済の先行きに不透明感が強まっているなかで、首相が解散を先送りしたのはやむを得ない判断だったといえる」、産経「米金融危機による日本への悪影響をいかに抑えるかを重視する首相の判断は妥当だ。党派を超えて危機を回避する枠組みが必要な時を迎えている。(略)首相は解散見送りにより政権運営の選択肢を自ら狭めてでも、政策実現を求めたのだ」、上毛・日本海・長崎など「経済危機の先行きが見通せない状態では、まずその対策に万全を期す必要がある。国際連携を強化するための首脳会議も予定されている。国民の多くも不安解消に取り組んでもらいたいという気持ちだろう。当面の解散見送りという首相の判断は妥当なものと理解できる」、秋田「日本経済にも深刻な影響が出ている状況に照らして『致し方ない』と言わざるを得ない。(略)現在世界を覆っているのは『百年に一度』といわれる深刻な金融危機である。世界同時不況の懸念すら出ている。いわば、有事なのだ」、北國「世界恐慌の入り口に立つ危うさを思えば、政治空白はできるだけつくらぬ方がよい。(略)国民の多くは『今は選挙どころではない』という思いが強いのではないか」、佐賀「先送りを非難する声があるが、冷静に現実を見れば先送りはやむを得ないだろう。(略)ここは野党も一時休戦し、景気対策に当たったらどうか。今は世界経済の安定のために知恵を出し合うべき時期だ」。

〈納得できぬ〉毎日「世界金融危機に対応するためにも首相は速やかに衆院解散を行い、国民の信を得た本格政権が経済対策のかじを取るべきだ。それだけに見送りの判断は大いに疑問である。(略)『これでもか』とばかりの選挙を意識した追加経済対策を見る限り、政治空白の回避が真の見送りの理由だったのか、疑問がつきまとう」、信毎「先送りが政治不信を募らせ、経済にもマイナスに影響しないか、心配だ。(略)首相が力説する経済情勢に目を向けても、解散を先送りする理由は見いだしにくい」、西日本「緊急事態を理由にして、解散・総選挙をずるずると引き延ばすのは納得できない。(略)景気の回復や経済の立て直しには相当な年月と大胆な政策転換が必要と覚悟しなければなるまい。そのためには、広範な国民的合意と果敢な政治のリーダーシップが欠かせない。民意の審判を受けた本格的な政権が、その任に当たるのが筋である」、神戸「解散すれば一カ月ほどの『空白』ができる。しかし、踏み切らないことで生まれる『空白』も忘れてはならない。(略)緊急対策の効果をどこで見極めて解散するか。先の難しさを思えば、首相は決断の機を見誤った感が強い」、山陽「今後は景気や支持率の動向に加え、野党との駆け引きの中で解散のタイミングを探るのだろう。まさに『展望なき解散見送り』といえる。求心力低下も懸念され、政権失速のリスクを抱え込んだ持久戦になろう」。

安定した政治の枠組みを

〈早期に信問え〉読売「衆院解散・総選挙の見送りにより、民主党が国会での抵抗戦術を強めるのは必至だ。首相の政権運営は一段と厳しさを増すが、首相はこれを乗り切ることができるのか。(略)衆院解散先送りは、首相にとって大きな賭けである。(略)責任ある政策を実行していくためには、やはり安定した政治の枠組みづくりが肝要だ。首相は、できるだけ早期に国民の信を問う必要があるだろう」、朝日「この難局を首相が本気で打開しようとするなら、結局は原点に戻って早期の総選挙で信を問い、政治に力強さを取り戻すしかあるまい。金融危機の実体経済への影響が深刻になるのはこれからだ。(略)首相は年末か年明けまでに解散を決断すべきだ」、北海道「こういう歴史的な局面だからこそ国民の支持を背景に政策を実行していく政権が必要だ。そのためには早期に総選挙を実施し、各党が公約を掲げて民意を問わねばならない」、京都「安倍、福田、麻生の三内閣は総選挙で国民の信を問わずに政権運営を続けてきた。国会は衆参の『ねじれ』で機能しているとは言い難い。年内実施を見送ったとしても、早期解散が望ましいことに変わりはない」。(審査室)

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