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2008年 11月18日
歴史的「変革」に期待
米国の新しい大統領に民主党のバラク・オバマ上院議員(47)が就くことが決まった。四日投開票の大統領選で共和党のジョン・マケイン上院議員を大差で破ったオバマ氏は、米史上初めての黒人大統領となる。民主党の政権奪還は八年ぶり。勝利演説で「米国に変革の時が来た」と語ったオバマ氏は、来年一月二十日の大統領就任後、金融危機対策やイラク駐留米軍の早期撤収など内外の政治課題に取り組む。大統領選結果を論じた五十一本の社・論説から。
リセット願望が共鳴
〈歴史的な一歩〉中国「黒人で初めての米大統領が誕生する。『変革』を掲げた民主党のバラク・オバマ氏が選挙戦で大勝し、次のリーダーに選ばれた。人種の壁を打ち破る、この日をどれほど多くの人たちが待ち望んでいただろう。まさに歴史的な一歩である」、毎日「黒人大統領は、いざ誕生してみると、文化革命とさえ表現できる驚きだ。(略)オバマ氏は多文化の統合の象徴として自分の人生を語ってきた。人種間の対立や報復ではなく、憲法前文を引用して『より完全な連合』を呼びかけた。説得力ある雄弁を受け入れ、人種の壁を越えて支持した白人もいただろう」、新潟「人種の壁が米国で法的に取り払われたのは遠い昔ではない。公民権を得てから短い年月で、かつての『奴隷の国』が黒人大統領を生み出すまでに変わった。移民の国である米社会のエネルギーにあらためて驚く」。
〈ブッシュ政治との決別〉朝日「今の米国社会には、沈滞した空気が漂っている。約8割の米国民が『米国は悪い方向に向かっている』と感じているという。(略)この閉塞感を打破して、新しくやり直したい。そんなリセット願望が若い世代を中心に共鳴し合い、雪だるま式に『オバマ現象』を膨らませていったのだろう。『イエス、ウィー・キャン(われわれはきっとできる)』というオバマ氏のメッセージは米国民を鼓舞し、前向きな挑戦への意欲を取り戻させた」、北海道「先が見えない焦り、失望感を米社会にもたらしたのは、ブッシュ政権の八年間にほかならない。イラク、アフガニスタンの現況は単独行動主義の破たんを物語る。米国発の金融危機は、レーガン以来の歴代共和党政権が推し進めた新自由主義政策の無残な結末である。オバマ氏の圧勝は、こうしたブッシュ政治との決別を米内外に告げるものだ」、産経「米国では1990年代以降、二大政党による対立と分断の政治が絶えず、そのことが国際社会における米国の指導力にも深刻な影を落とし続けてきた。(略)オバマ氏には、勝者も敗者もない国民の再統合と『協調の政治』の復活を期待したい」、中日・東京「選挙戦で際立ったのは、オバマ陣営の情報化社会への対応だ。ネットを駆使した組織づくり、資金集めなど、情報技術ツールを自在に使いこなす双方向型の組織運営は、従来型だった共和党マケイン陣営との時代や感性の違いを浮かび上がらせた。二十一世紀の新しい指導者像への期待を抱かせる」。
〈課題が山積〉西日本「『変化』への期待が大きいだけに、オバマ氏は歴代大統領にまして『変革』の中身が問われることになる。まず対応を迫られるのは金融システムと米景気の立て直しである。(略)ブッシュ政権は金融機関に公的資金を注入するなどの応急措置は取ったが、市場はなお不安定だ」、日経「次期大統領は必要なら追加的な公的資金の投入を含めた万全の対応をすべきだ。(略)危機克服に財政支出の拡大は避けられない。積極的施策は必要だが、効果が出なければ財政赤字膨張を背景としたドルへの信認低下につながる恐れがある」、読売「外交・安全保障分野でも、次期政権の課題は山積している。オバマ氏は、イラクの安定を確保しながら、駐留米軍の戦闘部隊を就任後16か月以内で撤退させると訴えてきた。それをどう実現させていくのか。アフガニスタンでは、国際テロ組織アル・カーイダやイスラム過激派勢力が武力攻勢を強めている。(略)政情不安なパキスタンやイランの核問題のほか、中東和平への取り組みも急務だ」。
拉致、通商などで連携密に
〈日米は連携を〉信毎「民主党の政権奪還で、(日米関係は)ブッシュ政権時代の蜜月とは差が出てきそうだ。まず北朝鮮をめぐる問題がある。日本人拉致を抱える日本にとって最優先の課題でも、米国とは温度差がある。連携を密にして対応しなければならない」、京都「(オバマ氏は)世界で最も豊かな民主主義国は共通の利益を有するとして、対日重視の姿勢を示している。民主党政権は、保護主義で相手国に規制撤廃や市場開放を迫る傾向がある。通商政策では、新政権が内向きの姿勢を強めないように日米は十分な意思疎通を図る必要がある」。(審査室)