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2008年 12月16日
歳出拡大 懸念の声も
政府は三日、来年度予算編成の基本方針を閣議決定した。社会保障費の伸び抑制や公共事業費削減を盛り込んだ概算要求基準(シーリング)を「維持」するとしたものの原案の「堅持」から表現を弱め、「果断な対応を機動的かつ弾力的に行う」と特別枠などで柔軟に財政出動する方針を盛り込んだ。小泉政権以来の財政再建路線を事実上転換したものだとして、三十二本の社・論説が取り上げた。
明確に「転換」表明すべき
〈路線転換〉神戸「今回の基本方針に盛り込まれた表現を見れば、(財政再建の)旗は降ろさなくとも、方針を大きく転換させようとするのは明らかだろう。経済情勢の悪化を受け、麻生政権は財政出動へかじを切る構えだ」、京都「財政規律を守る姿勢をみせてはいるものの、財政の健全化に向けて歳出を削減する小泉路線の大転換だ。それ相応の覚悟と、日本の将来を見据えたうえでの戦略をもって、具体的に編成するよう求めたい」、福島民友「これまでの路線とは全く逆である。一大方針転換なのだから総選挙で民意を問う必要はないのか。(略)景気優先は分かるが、これまでの路線との整合性はどう取るのか、麻生太郎首相の丁寧な説明が欲しい」。
〈なし崩し〉中日・東京「非常時対応ではあろうが『なし崩し路線転換』の印象が強い。(略)第二次補正予算案は国会に提出されず、成立の見通しすら立っていない。そこへ新たな歳出追加を威勢良くぶち上げるのは、支持率低迷に悩む麻生首相の人気取りのようにもみえる」、西日本「気になるのは、与党内で歳出の規模拡大ばかりを求める声が強まっていることだ。(略)しかし、わが国が巨額の借金を抱えていることを考えれば、なし崩し的に歳出を拡大することには賛成できない」、愛媛「政府が本気で路線を転換するのなら明確に表明すべきである。そうではなく、なし崩しに既成事実を積み上げていく手法は疑問だ」。
〈混迷編成〉毎日「これは脈絡のない歳出拡大への道である。加えて麻生太郎首相の立ち位置も明確ではない。景気最優先を打ち出してはいるものの、その方向にカジを切りきれてもいない。財政健全化路線を挫折させたとみられることへのこだわりがあるのだろう。混迷予算編成と言っていい状況だ」、岩手日報「これまでの財政規律と景気浮揚の財政出動をどうするか。自民党内からは『冷房と暖房を一緒にかけているようなものだ』という声すら聞こえる。政策決定の過程をみると麻生首相の求心力低下は明らかだ」、北海道「こんなに政府・与党内の足並みが乱れていて、まともな予算編成ができるのか心配だ。(略)政府・与党内で徹底した議論もなく、方針を転換するのでは、選挙目当てと思われても仕方ない」。
〈規律必要〉朝日「景気対策のため財政再建を一時棚上げするのなら、放漫財政に流れないための歯止めが不可欠になる。(略)いちど財政による刺激に頼ると、もっと景気がよくなるまでと欲をかき、赤字の山を築いてしまう。それが景気対策の歴史だった。財政立て直しと両立させるには、自らを律する厳しい枠をつくっておく必要がある」、産経「財政規律の緩みは極めて憂慮すべき事態といえる。(略)消費税を含む税制抜本改革が先送りされた中で、財政規律が崩壊すれば国債発行が膨張するだけだ。骨太2006の目標である2011年度の基礎的財政収支黒字化など吹き飛んでしまう。その先に待っているのは大増税である。麻生政権にも国民にもその覚悟があるのだろうか」、宮崎「経済危機に柔軟に対応することは必要で、決して方針転換は悪いことではない。ただ、将来世代にツケを回すことをできるだけ避けるよう財政規律を維持する努力が不可欠だ」。
将来の財源確保の道示せ
〈配慮当然〉読売「国内景気の落ち込みを見れば、財政面での一定の配慮は当然だ。財源が乏しいなかでどのようにメリハリをつけていくか。初の予算編成を指揮する麻生首相の指導力が問われることになる。(略)巨額な財政赤字を放置していいということではない。景気回復後の消費税引き上げなど、将来の財源確保の道筋を今から示しておくことが肝要だ」、日経「冷え込んだ需要の喚起は不可欠であり、財政政策の役割は重要である。ただ、かつてのようにむだな公共事業に巨額の資金を投じるのは望ましくない。財政コストと比べた刺激効果が高いものや、中長期的な経済活性化につながる施策を中心に予算をつけることを考えるべきだ」、山陽「歳出削減のために設定するシーリングが限界にきていることも否めない。ここは歳出の考え方を大胆に見直すとともに、一段のメリハリを利かせることが必要だ。従来のような予算のばらまきではなく、景気浮揚へ活力を生み出すような投資的な予算編成が求められる」(審査室)