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2009年 1月20日
逆境に地域力生かせ
地方各紙の新年号紙面
衆院選での「一票」重視
世界的な不況による雇用不安の声が全国にあふれる中で迎えた新年。地方からの論調は、地域が持つ底力を生かして苦境を乗り越えようという呼びかけが目立った。人を大切にする社会を築き直そうという訴えも多かった。九月の任期切れまでに必ずある総選挙での一票の重さが強調された。
地方自治の原点問われる年に
〈苦しい時こそ〉神戸「現状は『百年に一度の危機』という。たしかに、世界経済を襲った激震は一九二九年の大恐慌に匹敵するといっていい。国際協調をさらに強め、かつてと同じ道をたどることは避けねばならない。ただ、次の時代を切り開く考えが生まれたのも、大恐慌のなかからだった。いま再び、社会のあり方を根底から問う作業が求められていると受け止めたい」、新潟「首都圏の雇用環境が悪くなり、新潟から出て行く人が少なくなった。新たな大学が設立され、県内に進学する若者が増えたこともある。不況は人の動きに変化をもたらす。今がそのときだ。新たな県づくりの好機ととらえて腰を据えて取り組むべきだろう」、北國「景気が悪いと言っても、頑張っている企業もある。富山県の医薬品業界は後発医薬品の生産が増加し、売り上げは順調という。輸出関連企業が円高に苦しむ一方、原油価格や穀物価格の下落で恩恵を受けている企業も多いはずだ。そうした企業は、なかなか表に出たがらないが、『企業市民』の活動を通じて地域に貢献してはどうだろう」。
〈地方は力ある〉西日本「地方には地力があると思いたい。非正規労働者の解雇問題で、対策にまず手を打ったのは地方自治体だ。大分県では、県やいくつかの市が雇用と住まいを提供した。各自治体も相次いで追随した。国の施策は、こうした地方の動きを追認する形となった。子どもの無保険問題も、解消に取り組む姿勢をまず見せたのは、地方だった」、宮崎「この逆境の時こそ、私たちが拠(よ)って立つべきふるさとの『地域力』を生かすチャンスだと考えたい。多くの人の耳には届いているに違いないのだ。自らを立て直す『ふるさと行き』の最終に間に合う人は急ぎなさい、と叫ぶ駅長の声が。自信を持つべきなのは、本県の地域力は確実にその中身を進化、深めてきていることだ」、河北「ここは実業重視の基本に立ち返らなければならない。虚業に踊らされることなく、確固たる実の世界の再構築が何より必要だ。幸い、東北、特に宮城は、逆風の中、投資額が圧縮されたとはいえ、既にトヨタ自動車グループのセントラル自動車(神奈川県相模原市)の本社・工場移転が着工されるなど、近い将来自動車産業の一大集積地となると見込まれている」、山陽「政府は今秋にも新分権一括法案の国会提出を予定するなど、分権改革の流れが加速しそうだ。中央省庁の抵抗はあろうが、『地域のことは地域で決める』という地方自治の原点が問われる年になろう。改革の主役は市町村であり、地域の創意工夫を引き出すのが分権改革の狙いだ。市町村は『平成の大合併』で規模が拡大し、行財政基盤も強化されてきた。地方が活力を取り戻すチャンスと受け止めたい」。
〈政権選択の年〉愛媛「次の衆院選はいつにも増して重大だ。民主党の政権獲得が現実味を帯びてきているからだ。真の意味で政権選択をかけた『総決戦』だ。政界再編の可能性もあろう。衆院で与党、参院で野党が多数を占める『ねじれ国会』の在り方にも大きな影響が及ぶ」、信毎「政権交代の可能性が常にそこにあるだけでも、政治にエネルギーが吹き込まれる。緊迫した政治状況を前向きに受け止め、生かすことを考えたい。政治家が言うことに注意深く耳を傾け、投票所に足を運んで一票を投じる。そのことによって私たちは政治と暮らしを変えることができる。力を信じよう」、静岡「切実な安全網の拡充と、危機に名を借りた財政の野放図な膨張を見分ける目がほしい。深刻な不況が続き、暮らしに相当の辛抱を覚悟せざるを得ない。そういう中で迎える『選択』の意味は、この困難をともに歯を食いしばりながら耐え抜くに足る政治を選ぶことだろう」。
〈人が支え合う〉北海道「世界が米国一極から、多極化へ向かう中で、日本がリードすべき役割は少なくないと考える。本来、自然と共に人々が支え合い、教育水準の高い社会を形作っていた日本には、モノづくりで培われた誇るべき技術力もある。知恵を総動員して社会を立て直し、『人も資源も粗末にしない』価値観に基づく、新しい経済の枠組みを目指すべきだ。それが、温暖化に病む地球の未来を救うことにもつながる」、京都「厳しい話ばかりではつらい。阪神淡路大震災の時、若者のボランティアグループが活躍したように、NPO法人(特定非営利活動法人)など市民活動の広がり、中でも若い人たちに希望の灯を見いだしたい。とかく今の若者は、他人や社会に無関心と言われがちだが、必ずしもそうではない。京都市のNPO法人『テラ・ルネッサンス』がいい例だ。(略)目指すは『すべての生命が安心して生活できる社会の実現』。人を大切にし、助け合う精神にほかならない。わたしたちも未来をつくるちからがあると信じ、さあ一歩踏みだそう」。
雇用、選挙、農業・漁業の挑戦
【1面トップ】五十四紙がニュース(調査など含む)、十二紙は連載、九紙が企画(対談など含む)でスタートした。
〈ニュース〉景気・雇用の悪化を重視したのが岩手日報「農林水産業に就業誘導 雇用危機受け県が構造改革」、福島民報「離職者、Uターン 地場産業の担い手に 新たな『職』創出」、北國「経済、雇用 官民で対策」、佐賀「景気・雇用を優先 緊急プログラム見直し 古川知事方針示す」。地場産業に期待し釧路「厚岸ニシン復活へ 種苗放流で資源量回復」、福島民友「『福島牛』海外へ 3月にも全農福島」、新交通で南信州「直線ルートで飯田駅を リニア誘致へ正念場」、東奥「新幹線E5系6月完成 新青森―東京3時間5分時代へ」。衆院選を展望したのが岩手日日、上毛、山梨、奈良、県内首長選を含めたのが山陰、島根、知事選に絞ったのが山形、知事選と首長選が秋田。医療関係は徳島「『県内勤務』終了の自治医大出身者 県職員に期限採用」、宮崎「宮大大学院に新研究科 生命科学専門家を養成」、災害関連で南日本「鹿県防災ヘリ 本土内も救急搬送 出動基準見直し」、神戸「壮健兵庫の美 姫路城耐震性 震度6強」。中日は事件続報で「汚染米転売 浅井半年で2500万円稼ぐ」、信毎は剰余金問題で「県が財政負担する全国団体 県監査委員が調査」。開発や実験もので高知「液晶で世界最小モーター」、北海道「雪捨て場冷気 農産物貯蔵に」。他に河北「仙台の人口 来年ピークに減少」、神奈川「みどり税『瀬上の森』に 保全へ買い取り検討 横浜市」、中国「新球場元年幕開け 広島の地域力を結集」、山陽「ベール脱ぐ吉備の王 岡山県内 動き出した巨大古墳調査」など。
〈1面連載〉三日付を含め三十三紙が掲載。転換期の農業、漁業などをテーマにしたデーリー東北「食を創(つく)る」、陸奥「冬の農業 雪国の挑戦」、秋田「再興あきた農業」、十勝毎日「とかち農立主義」、河北「漁場が消える」。地域が持つエネルギーに迫った西日本「集落力」、北日本「地域再び」、千葉「地域力再生」、日本海「自照自輝」。医療問題で沖縄「地域医療のカルテ」、長崎「長崎の医療は今」、福島民友「医療危機」。他に中日「日本の選択点」、神戸「好齢者たち」、奈良「七大寺今様」、宮崎「真の時代」、琉球「新交易時代 アジア商圏と沖縄」、室蘭「鉄と生きる」、下野「明日をつなぐ」など。
地域振興、食、環境の特集目立つ
【ページ数】在京紙を含め、別刷り込みのページ数は、琉球の百三十ページを最高に百二十ページ以上が四紙。八十~百十六ページが六十九紙。四十~七十八ページが二十六紙。別刷りは地域振興・再発見、食や資源問題、環境・地球温暖化問題、それに総選挙の特集が目立った。(審査室)