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2009年 2月3日
期待を力に「再生」を
オバマ米大統領就任をめぐる社説
対話重視の外交を歓迎
未曾有の経済危機に直面する中で一月二十日、四十七歳のバラク・オバマ氏が第四十四代米大統領に就任した。黒人大統領は米国初。首都ワシントンで就任式に臨んだ新大統領は宣誓の後、約二百万人の聴衆を前に「米国の再生」に取りかかると宣言し、国民にも「新たな責任の時代」に立ち向かうよう呼びかけた。就任時に四十八本の社・論説が取り上げた。
国民に自覚促した演説
〈期待〉京都「米国だけでなく、世界中からこれほどまで就任が待ち望まれた大統領は、かつて例がないのではないか。(略)その関心の高まりは、米国と世界の直面する過酷で抜き差しならない現実の裏返しでもある」、神奈川「期待のあまりの高さから政策がつまずいた際の失望と反動の大きさを懸念する声さえある。それでも、オバマ大統領以上に米国民に希望を与え、団結させ、『変革』へと導く人物をほかに探すのは難しかろう」、毎日「大統領にとって必要なのは説得のパワーだ。議会を説得し、メディアを説得し、国民を説得し、同意を得て、初めて政策が実現する。80%ときわめて高い支持率で出発したオバマ大統領は、国民と世界の強い期待を重圧ではなく、説得のための資産ととらえる強さを備えてほしい」。
〈冷静〉産経「約20分間の演説は『新たな責任の時代』を強調した以外には目立つキャッチフレーズもなく、『イエス・ウイ・キャン』で聴衆と呼応しあう高揚感もなかった。(略)国民の異常な期待値の高まりを警戒した結果が、冷静にトーンダウンされた演説になったのだろう」、高知「国民や国際社会の期待は大きく膨らんでいるだけに、挑戦は時間との闘いでもある。(略)大恐慌後の立て直しに長期間を要したように、今回も景気対策が一朝一夕に実を結ぶとは考えにくい。オバマ氏が短期間での解決は困難だとし、国民に忍耐の精神を再確認するよう求めざるを得ないのが現実だ」、南日本「希望をちりばめるだけでは解決できない厳しい現実を見据えるからに違いない。『新たな責任の時代』という表現で、国民一人一人の自覚と努力を促したのには、国民参加で融和と結束を図ろうとの狙いがのぞく」。
〈再生〉読売「新大統領は、なすべき仕事の第一に、金融危機の深刻化で冷え込んだ米国経済の再生を挙げた。新大統領は、『経済はひどく弱体化している。一部の者の強欲と無責任の結果だけでなく、我々全員の失敗だ』と率直に語った。危機を拡大させたブッシュ前大統領の路線を転換し、経済の立て直しをともに目指そうと、全国民に呼びかけたといえよう」、西日本「『問われているのは政府の大小ではない。機能するかどうかだ』と述べた。『小さな政府』を掲げる保守主義でも『大きな政府』に傾きがちなリベラリズムでもない、党派やイデオロギーを超えた現実的な経済財政運営を表明したものと受け止めたい。この方向性は恐らく間違っていない。問われるのは大統領の指導力と実行力だ」、日経「オバマ大統領は経済のグローバル化という現実を見据えた対応の必要性を強調しており、基本的には自由貿易を重視している。ただ、経済が悪化する中で、自国産業や企業の保護につながる政策を求める圧力は強まりつつある。(略)米国が自国産業保護に傾斜すれば、これに追随する動きが世界に広がり、世界経済の足を引っ張る恐れもある。オバマ大統領は保護主義の誘惑を断ち切らなければならない」。
日本も役割を示すべき
〈協調〉朝日「『すべての国の皆さんや政府に知ってほしい』という異例の呼びかけがあった。イスラム世界に対し『私たちは、新たな道を模索する』と述べ、これまでとはアプローチを変え、共通の利益と相互の尊敬に基づく関係を築きたいという意欲を示した。(略)不信と憎悪の悪循環を何としても断ちたいという思いに違いない。それなしに中東和平もイラクの安定もないし、本当のテロ対策も成り立つまい」、中日・東京「テロには屈しないが、対話の用意はある。ブッシュ前政権とは一線を画すメッセージだ。イスラム諸国、テロ組織に限らず、北朝鮮、キューバなど各国も新しい米政権との関係改善を模索している。対話の糸口を探る好機とすべきだ」、愛媛「新外交は軍事力だけでなく、経済・文化のソフトパワーを組み合わせた『スマートパワー』を掲げ、対話を重視した国際協調路線を目指すとしている。ブッシュ時代の単独行動主義からの決別は日本としても歓迎したい」、神戸「米国の政策転換は、同盟国である日本にも、より大きな国際貢献を求めることになるだろう。日本は米国への依存を強めるのではなく、世界で果たすべき役割を自ら示していく必要がある」。(審査室)