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2009年 2月10日
「特例で」「際限ない」

ソマリアへの海自派遣をめぐる社説
海賊対策で新法を急げ

浜田靖一防衛相は一月二十八日、ソマリア沖の海賊対策として、海上警備行動で海上自衛隊艦船を派遣するための準備に入るように統合幕僚長らに指示した。海上警備行動は自衛隊法に基づき、海上保安庁が手に負えない事態が起きた時、防衛相が海上自衛隊に出動を命じる措置。二十八本の社・論説が取り上げ論調は割れたが、ほとんどが国会に対し新法制定を急ぐように要請した。

海保巡視船の活用は

〈やむを得ない〉朝日「約20カ国が軍艦を派遣し、貨物船やタンカーの護衛にあたっている。だが、海賊行為は増え続け、最近では未遂も含めて2日に1件のペースだ。(略)アデン湾で長期間、活動するのは、海上保安庁の装備や態勢では実質的に難しい。また海賊行為からの護衛は、憲法が禁じる海外での武力行使にはあたらない。(略)事態の深刻さを考えれば、護衛艦の派遣はやむを得ない判断だろう」、毎日「警察行動である海賊対策は本来、海上保安庁の任務だが、海賊がロケット砲などで重武装しているために海保の対応が困難ということであれば、海自派遣は有効な方策の一つである。(略)あくまで今回に限った特例措置であるべきだ」、読売「ソマリア沖では、1日平均5、6隻の日本関連船舶が運航している。いつ重大な海賊被害が発生してもおかしくない。現行法に基づく海自派遣は、迅速性を優先した『応急措置』と言える」。

〈疑問だ〉中日・東京「日本が傍観しているわけにはいかないと、海賊対策を急ぐのは理解できる。(略)アフリカ方面まで派遣できるなら、活動範囲は際限がなくなってしまう。(略)不測の事態にどう臨むのか、その詰めが生煮えのまま、防衛省に判断を丸投げするのは疑問だ」、北海道「海自艦をアフリカ沖へ送り出すことは法の拡大解釈にならないか。(略)政府は、海上保安庁の巡視船では装備が不十分で対応できないと説明してきた、本当にそうか、しっかり検証する必要があるだろう」、琉球「憲法を軽んじていないか。軍事組織の海外派遣は、慎重の上にも慎重を期さなければならない重大な問題だ。場当たり的な対応や乱暴な議論で済まされる筋合いの話ではない。(略)国会審議なき自衛隊派遣は、議会制民主主義のみならず法治国家としての根底を揺るがしかねない」、デーリー東北など「海外における武器使用となれば、『集団自衛権』との関係も検討しておく必要がある。(略)現行法の拡大解釈という便宜的なやり方で派遣すべきではあるまい」。

〈「しきしま」〉中国「海保は『保安庁の能力では派遣は難しい』という。(略)世界最大の巡視船『しきしま』はヘリコプターを二機搭載し、海自の護衛艦にひけをとらないほどの装備を持っている。かつてプルトニウム運搬船をフランスまで護衛したこともある。海保の派遣について、どこまで本気で検討されたのかどうか、疑問と言わざるを得ない」、新潟「なぜ海保の活用を考えないのか。(略)船舶数は世界トップクラスであり、世界最大の巡視船『しきしま』をはじめ、ヘリ搭載型の巡視船は外洋でも十分活動できるし、装備も強力だ。(略)『しきしま』は、昨年末には東南アジア海域で対海賊の訓練を商船と合同で行っている。海自より哨戒や洋上監視の能力が劣るとは思えない」、北國「海保の所属船は沿岸警備が主任務であり、遠洋航海に耐え、高速走行できる巡視船は一隻しかない。交代の艦船を用意できないため、特定の乗員に長期勤務を強いることになるばかりか、武器の威力や装甲という点で見劣りがする。巡視船の派遣は非現実的と言わざるを得ないだろう。そもそも、ロケット砲などの重火器を備えたソマリアの海賊に、巡視船一隻だけでは不安がある。乗員の安全を第一に考えるなら、(海自艦の複数派遣は)一番合理的な方法である」。

日本にふさわしい貢献を

〈海賊対策新法〉産経「今回は海賊行為全般を取り締まることができる『海賊新法』制定までのつなぎの措置である。(略)そもそも自衛艦による護衛を求めたのは民主党議員の国会での昨秋の質問だった。ところが民主党は海賊対処への党内論議をほとんど行っていない。(略)海上交通路の安全は日本にとって死活的に重要だ。それだけに海賊新法制定には党派を超えた合意形成が不可欠である」、徳島「現行法でも新法でも、自衛隊の派遣によって死傷者が出るような事態は何としても避けなければならない。慎重に論議を重ね、民生支援を中心に日本にふさわしいソマリア貢献策を講じるべきだ」、日経「最新の世論調査でも(略)派遣肯定論が六割を超えた。(略)近隣諸国の反応がしばしば反対の根拠とされるが、今回は中国だけでなく、韓国も艦船派遣の準備をしている。新法の早期成立に向けた超党派の議論が急がれる」。(審査室)

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