2009年 2月17日
人事構造 一新忘れず

公務員改革の工程表決定をめぐる社説
天下り根絶、議論尽くせ

政府の国家公務員制度改革推進本部(本部長・麻生太郎首相)は三日、改革の手順を示す「工程表」を決定した。公務員幹部人事の一元管理のために二〇一〇年四月をめどに内閣人事・行政管理局を新設、人事院の機能を一部移管する。麻生首相は国会で、官僚の天下りと天下りを繰り返す「渡り」の省庁あっせんを今年いっぱいで廃止するため、政令をつくりたいとも答弁した。機能移管には人事院が反対しており、改革実現までには曲折がありそうだ。工程表決定を三十三本の社・論説が取り上げた。

人事院も反対だけでなく

〈組織に大なた〉産経「人事院が機能移管案に反対する主な理由は、国家公務員は労働基本権が制約されており、給与を決める権限が内閣に移れば、給与削減など一方的な労働条件の変更を迫られるという点だ。採用や任用などの権限も移れば、政権に都合のよい人材ばかりが登用され、やがて偏った組織になるとの懸念などがあるという。耳を傾けるべき論点はある。だが、公務員制度改革はこうした問題点も踏まえて、政治主導で官僚組織に大なたを振るおうというものだ」、信毎「(人事院総裁は)首相が招集した会議への出席を拒否し、工程表の決定がずれこんだ。(略)今度の総裁の振る舞いに対しては、官僚の独善性を感じた人が多いのではないか。国民全体に奉仕する組織である以上、人事院も改革に背を向けるだけでは済まされない」、高知「人事院側が主張するように、公務員人事行政の中立・公正性の確保が重要なことは間違いない。だが同時に、独立性ゆえにすべての改革を排除できるものでもないはずだ。省庁が自らの利益を優先する傾向を改めなければならない」、毎日「人事院の対応は硬直的に過ぎ、理解できない。政府は早期に収拾を図らねばならない。一方で、工程表が掲げた『天下りの根絶』が十分に裏付けられたとは言いがたい。新たな人事体系の具体化を急ぐべきである」。

〈拙速避けたい〉朝日「おかしいことを改めるのは結構だ。でも、工程表づくりといい、突然の答弁変更といい、どこか世間受けを狙った『公務員たたき』のにおいがしないでもない。どの政党が政権をとろうと、その意思に従う効率的な官僚機構をつくるのが改革の目的だ。大胆さは必要だが、拙速に進めて組織の士気や質が落ちては元も子もない。野党とも協議して、確かな制度設計をしてもらいたい」、北海道「異例の見切り発車と言わざるを得ない。(略)天下りは、霞が関のピラミッド型人事構造に由来している。昇進するに従ってポストが減る枠組みでは早期退職が必然的に生まれるからだ。天下りを断つには、人事の仕組みの根本にメスを入れる必要がある」、読売「今回、中立の第三者機関としての人事院の位置づけや役割について、政府部内の論議は不十分だ。引き続き、関係者は冷静に協議を進めてもらいたい。(略)天下りの弊は解消すべきだが、与野党ともに、選挙目当てで『根絶』だけを唱えても、現実的な解決にはならない。公務員が定年まで働けるような環境整備に取り組むことが先決だ」、西日本「消費税の増税を掲げる麻生政権にとって、国民からその理解を得るためには、公務員改革は断行すべき課題である。政府は人事局設置の関連法案を三月に提出する方針だが、それまでにはまだ間がある。いたずらな対立を避け、改革に疑念と禍根を残さない議論を求めたい」。

実現の道筋があいまい

〈てごわい官僚〉中日・東京「首相は衆院予算委で省庁あっせんの天下りと、天下りを繰り返す『渡り』廃止の政令をつくる意向を示した。『渡り容認』で発言が迷走した末に。行動が何かと遅いのが気になる。工程表に盛り込まれた『天下り根絶』も実現への道筋があいまいだ。法律に分かりやすく明記すべきだ。そうでないと手練手管にたけた官僚を抑え込めまい」、北日本「公務員の天下りや渡りに対する国民の目はますます厳しくなっている。麻生首相が積極的な姿勢に転じるのは、『ぶれた』ことにはなるまい。強い覚悟で取り組んでもらいたい」、日経「政府と国会は霞が関の抵抗を排して、公務員制度改革を着実に前進させる責任がある。(略)省庁による天下りあっせんの廃止に実効性を持たせるには、昨年末に開設した官民人材交流センターによる再就職あっせんを軌道に乗せることが不可欠だ。工程表では『二〇一一年からいわゆる「天下り」の根絶に対応した新たな人事制度を実現する』としていた新人事制度の検討作業も、前倒しする必要がある」、岩手日報「公務員制度改革は政府・与党だけの課題ではない。民主党など野党も対案を示さなければ、霞が関官僚の『逃げ得』になってしまう」。(審査室)

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