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2009年 3月10日
初の招待者だったが
日米首脳会談をめぐる社説
同盟の中身に注意必要
麻生太郎首相が二月二十四日午前(日本時間二十五日未明)、ワシントンでオバマ米大統領と初の首脳会談を行った。両首脳は日米両国が国際社会のさまざまな課題に共同で対処する「重層的同盟」構築を目指す方針で一致した。麻生首相はオバマ大統領が就任後初めてホワイトハウスに招いた外国首脳となったが、恒例の昼食会も共同会見もない首脳会談だった。四十二本の社・論説が取り上げた。
「麻生」より「日本」厚遇
〈米の対応〉毎日「共同記者会見や昼食会が行われなかったのは異例である。(略)米側のそっけない対応ぶりは、支持率低下に歯止めがかからず失速寸前の麻生政権の今後をにらんでのことかもしれない。『招待するのは個人ではなく日本の首相』(米国務省)と割り切っているのだろう」、岩手日報「会談当日はオバマ大統領にとって初の議会演説と重なる窮屈な日程だった事情もあるが、背景には早期会談に応じることで日本という『国』には配慮しつつ、不安定な『麻生政権』とは距離を置いた方が得策という判断が働いたとみられる」、北國「麻生首相個人よりも同盟国日本を厚遇したというべきであり、首脳会談でのオバマ大統領の(『日本は偉大なパートナー』という)発言は、いわば麻生首相の肩越しに、総選挙を控えた日本の与野党にも向けて発せられたと受け止める必要がある」、日経「麻生氏を日本の首相としては大切にもてなすが、政治家同士の個人的な関係を築く気持ちにならない―。日本の内政の現実を直視すれば、仮にオバマ大統領が、そう考えたとしても無理はない」。
〈違和感〉朝日「内閣支持率が極端に低迷し、与党の中からも退陣論が出ている『弱い首相』が、何より国家指導者としての存在感が問われる首脳外交をする違和感はぬぐいがたい。(略)国民の審判を避け続けた揚げ句、民意の支えを失いかけた政権がそれを成し遂げようとしても、もともと無理があるのだ」、中日・東京「初の招待者たる〝栄誉〟が唯一の成果なら、締まらない話だ。政権浮揚へ外交で得点を狙う手法が通用する時代ではない。(略)国益と切り離せない外交を、もしも延命の道具にするつもりならば、本末転倒だといわれても仕方ない」、神戸「そもそも『予算の執行が最大の景気対策』といいながら実行が遅れ、世論の支持を失いつつある首相が、中長期的な外交戦略を語っても説得力に欠ける」、新潟「中身は新味にも迫力にも欠けた。日米間の懸案を列挙して協力を確認するにとどまった。これでは表敬訪問の域を出ない。(略)首相は初の日米首脳会談があっさり終わった理由について思いをめぐらすべきである」。
〈重層的同盟〉産経「アジアの日本が率先して米国と連携する明確な姿勢を世界にアピールした。日米を先導役に、協調して難題に取り組む機運を欧州や世界に広げていきたい。(略)スピードが勝負となる緊迫した国際情勢の下で、両首脳が直接対話の場を設けて同盟の将来像や目的意識を共有した意義は大きい」、読売「幅広い分野で重層的な協力を続けることが、日米同盟の強化にも大いに役立つだろう。(略)オバマ政権は多国間協調外交を志向している。日本は、これに呼応し、従来以上に能動的な外交を展開する必要がある。互いに信頼できるパートナーになる努力を重ねることが肝要だ」、西日本「新しい米大統領がホワイトハウスに招く最初の外国首脳に選ばれるのは、晴れがましいことに違いない。(略)大統領は『日本は偉大なパートナーだ』とまで持ち上げた。悪い気はしないが、名誉の代償は安くはあるまい」。
展開すべきは非軍事協力
〈同盟の中身〉信毎「国際的な課題について協力し合うのは当然としても、いい顔を見せるだけでは外交とは言えない。(略)米国の要求が今後、どのような形で突きつけられるのか、重層的同盟の中身がどのようなものになるのか、十分に注意しなくてはならない」、宮崎「混同や曖昧(あいまい)さを排除しなければならない点がある。世界規模で展開すべきは非軍事の『日米協力』であって、米戦略と不可分となった軍事的な『日米同盟』ではないことである。そのことを前提条件とした上で、オバマ政権が差し出す手を握り返すべきである」、高知「オバマ政権の東アジア外交は安全保障や経済分野での中国との関係強化を柱に据えている。(略)厚遇に浮かれているわけにはいかない。日本としては米中の動きを見極めながら、対米、対中関係の在り方を考えていく必要がある」、琉球「要は何ができ、何ができないかを明確にすることだ。これは普天間飛行場移設など米軍再編問題にも当てはまる。その延長上には対等な関係に支えられた本当の日米新時代が見えてくるはずだ」。(審査室)