2009年 3月17日
巨額の献金「不自然」

小沢氏秘書の逮捕をめぐる社説
説明にも疑問点多く

小沢一郎民主党代表の資金管理団体で会計責任者を務める公設第一秘書が三日、東京地検に政治資金規正法違反容疑で逮捕された。西松建設が政治団体を通して小沢氏個人へ迂回献金し、秘書も承知して献金を受けていた疑いだ。翌四日、小沢代表は記者会見で潔白を強調、検察を批判した。自民党有力議員も西松から献金を受けていたことが判明。七十本を超える社・論説が逮捕と釈明会見を取り上げた。

利権構造に言及せず

〈秘書の逮捕〉日経「政治資金規正法は、会社から政治家個人への献金を原則禁止している。(略)政治資金の名を隠れミノにしてワイロ性のこもるカネを政治家に贈る実質的な贈収賄を防止する意味がある。(略)小沢代表側は、政治資金を処理するうえでの単なる形式違反ではなく、政治とカネを巡って政治家が国民に疑惑を抱かれぬよう細心の注意を払うべきところでごまかしをした嫌疑をかけられたわけだ」、上毛・大分など「逮捕されたのは、自らの資金管理団体の会計を任せた公設第一秘書だ。違法献金が事実であれば当然、監督責任がある。それに何より、自民党に代わり政権を担おうかという党の代表として国民への説明責任がある。まず、それを果たしてほしい」、読売「公設秘書が逮捕された事実は重い。民主党内では小沢氏の進退を問う声も出ている。小沢氏は、西松建設との関係や資金管理団体の収支などについて進んで明らかにする必要がある」、中日・東京「総選挙が近いこの時期に野党党首の公設秘書逮捕に踏み切った理由について、東京地検にも説明を求めたい。民主党幹部は『仕組まれた陰謀だ』と述べている。与党側政治家には問題はないのか。(略)公正さを疑われては、東京地検も本意ではなかろう」。

〈小沢氏の釈明〉産経「政治資金収支報告書によると、平成18年までの12年間に、西松建設側から2つの政治団体を通じて与野党の国会議員側に、約4億8000万円が渡っている。いずれも政治献金やパーティー券購入などで、このうち2億円近くが小沢氏側へのものだった。小沢氏の会見は、こうした巨額の資金がなぜ継続的に提供されたのか、という素朴な疑問に答えるものではなかった。2億円近くの資金の提供者が、どこのだれだか知らないといったような説明は、国民の一般常識では理解できないだろう」、毎日「(小沢氏は)『一般的に献金について、どういうところから出ているかはせんさくしない』と答えた。小口献金ならともかく、金額の多さを考えた場合、あまりに不自然ではないか」、新潟「『なぜおれだけが』との悔しさがにじんだ会見といえる。その気持ちも分からないではない。だが、小沢氏は何か勘違いをしている。国民の多くはいかがわしい団体から変なカネをもらっていたのではないか、といぶかっているのだ。(略)『政治団体からの寄付という認識だった』『(カネの)出どころは詮索(せんさく)しない』では説明になっていない。こうした金銭感覚そのものが問われていることを自覚すべきだ」、朝日「民主党は、政官業の不透明な関係に支えられた自民党的な利権構造を厳しく批判してきた。ところが小沢氏の会見では、自分自身とゼネコンとのかかわりについては、一言もなかった」、岩手日報「小沢代表は『必ず近いうちに嫌疑は晴れる』と潔白に自信を示したが、長年支えてきた地元支持者らはその言葉を信じたいだろう。なにせ総選挙を目前に、政権交代が現実味を増していたからこそ、今度の事態はまさに青天のへきれきだった。なぜ、この時期にという疑問は誰しもが抱くが、(略)政治的な意図はないと思う。県民も今後の厳正、公正な捜査を見守るしかない」。

国民の政治不信が増幅

〈懸念や課題〉琉球「政治家の資金管理団体が献金を受ける以上、政治家自身も当然責任を問われる。(略)献金をチェックできないならば、金権政治や政財界の腐敗、癒着につながるとも指摘される企業献金は廃止するべきだろう。政党交付金として二〇〇八年は三百十九億円が税金から主要政党に配られた。それでも政治資金が不足なら残りは党費、個人献金で賄うのが基本である」、徳島「ゼネコン汚職で違法献金が大きな問題になったにもかかわらず、悪質な手口が使われていたことにあらためて驚かされる。なぜ、ダミー団体をつくってまで献金しようとするのか。業界のモラル向上はもちろんだが、『政治とカネ』の関係をもっと透明にしなければならない」、河北「(民主党は)自力で疑念を払えなければ、政権交代に向けて整えた陣形が崩れることも覚悟する必要がある。(略)二大政党がともに〝ダッチロール状態〟に入ったと見られてしまえば、政治に対する国民の不信、しらけ、あきらめが増幅することは間違いあるまい。そのことが怖い」。(審査室)

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