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2009年 3月31日
夢をかなえる第一歩
日本人初の宇宙長期滞在をめぐる社説
有人活動の目的、議論を
日本人宇宙飛行士の若田光一さんが十五日(日本時間十六日)、米スペースシャトル「ディスカバリー」に搭乗し三度目の宇宙飛行に出発した。若田さんは今回、日本人初となる国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在で医学的な実験を含め宇宙生活のノウハウを蓄積するほか、日本の実験棟「きぼう」を完成させる任務も担う。三か月間におよぶ若田さんの「挑戦」を三十二本の社・論説が取り上げた。
子供の好奇心も育む
〈実りある一歩に〉西日本「日本人の飛行士がようやくたどり着いた宇宙の長期滞在だ。この後、野口聡一さんと古川聡さんが半年間、別々に滞在することも決まっている。若田さんから始まる新たな『歴史』を実りあるものにしてこそ、今後の展望も開けると思いたい」、神戸「地上から四百キロ上空の国際宇宙ステーション(ISS)に日本の実験棟『きぼう』を完成させるのが最大の任務だ。若田さんは日本人で初めて宇宙に長期滞在する。ISSに念願だった自前の施設を持つことで、日本は宇宙開発の新しい一歩を踏み出せる」、日経「長期滞在は日本人の宇宙常駐の夢をかなえる一歩。滞在中はロボットアーム作業など見せ場もあり、活躍が見られるだろう。ただ、有人活動ばかりが脚光を浴び、肝心の実験や成果がお粗末では困る。日本が有人計画で何を目指すべきか。その方向が見える活動を期待したい」。
〈被験者として〉読売「長期滞在ならではの目玉のひとつは、自らが『被験者』になる健康影響研究だ。無重力下では筋肉や骨が弱る。精神面への影響もある。日課である約2時間のトレーニングをこなしつつ、骨粗しょう症の薬を飲んで効果を試す。日本にとって貴重な健康データが得られるはずだ」、高知「(若田さんは)短期の飛行ではできない無重力を利用した宇宙実験や、『きぼう』の保守、整備などに当たる。自らを被験者とした医学研究も重要な仕事だ。心電図や宇宙放射線の被ばく線量の測定など、医療への応用や今後の宇宙開発に不可欠なデータの取得を目指す」、朝日「長期滞在の利点を生かした成果を期待しよう。宇宙で腕立て伏せはできるのか。目薬はどうやってさせばよいか。一般から公募したおもしろ実験も行われる。無重量状態の中で芸術作品を作る計画もある。子どもたちの好奇心を育む機会としても活用したい」、山陽「独自の有人宇宙活動を視野に据える日本にとって、自国の飛行士が長期滞在して巨大有人宇宙施設の運用ノウハウを得、人体への影響などを体験することは貴重な財産となる」。
〈有人活動計画〉産経「今回の若田さんの活動によって、日本もようやく本格的な有人宇宙活動の第一歩を踏み出すことになった。政府の宇宙開発戦略本部も将来の有人宇宙活動の検討に着手したところだ。米国が月や火星探査に意欲を示す中、日本も宇宙開発の新たなステージに進もうとしている」、毎日「重要なのは、若田さんの長期滞在を、日本の有人宇宙技術のあり方を本気で考えるきっかけにすることだ。(略)独自の有人技術を開発するには巨額の費用や人命へのリスクを伴う。30年後、50年後に日本はどう宇宙開発にかかわるのか。若田さんの活動に注目しつつ、考えたい」、陸奥「若田さんはきぼうを完成させた後にエンデバーで帰還する。日本の有人宇宙開発にとって未知への挑戦となるが、そこで得られる知見は近い将来、国際協力によって行われるであろう月や火星の探査に向けて日本が手を挙げる場合にその基盤となるだけに、今回のミッションが必ずや成功することを期待したい」。
国は明確な将来展望示せ
〈夢だけでは...〉北海道「(政府は)五月には宇宙基本計画をまとめる予定だが、数兆円に上るとみられる有人探査の開発費を日本単独でまかなうのか、新たに国際協力の枠組みをつくるのか。課題は残っている。宇宙開発は夢やロマンだけでは語れない。国は費用に見合う具体的な効果について、十分に説明する義務がある」、上毛・長崎など「流れは有人活動の本格化に向かっているように見える。そこで気になるのは、何のための有人活動かという根っこの部分だ。議論がまだまだ足りない。有人活動には莫大(ばくだい)なお金がかかり、危険も伴う。『夢があるから』とか『諸外国に後れを取るから』といった理由だけで納得するのは難しい」、中日・東京「将来の月面活動が国際協力で行われるとしても、対等な有人技術を持っていないと資金提供だけに終わりかねない。既に欧州やロシアが有人探査を表明したほか、中国も視野に入れている。わが国も明確な将来展望を示して推進する必要がある」。(審査室)