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2009年 4月28日
違反明記 ▶ ◀ 効果弱い

北朝鮮非難の安保理声明をめぐる社説
決議不発でも説得強化

北朝鮮ミサイル発射問題で国連安保理は十三日、発射を安保理決議違反として非難する議長声明を全会一致で採択した。中国、ロシアの反対で新決議は実現しなかったが、北朝鮮が主張する人工衛星か否かにかかわらず、五日の発射自体が問題と断じた。これに対し北朝鮮は十四日、核問題をめぐる六か国協議からの離脱や核施設再稼働の方針を表明するなど、挑戦的な姿勢を強めている。三十八本の社・論説が取り上げた。

国際社会の亀裂を回避

《一致して非難》神戸「『衛星』にこだわる中ロに配慮し『ミサイル』の言葉は使わなかったものの、『発射』が北朝鮮の核実験強行後に採択された制裁決議一七一八に『違反する』と明確にした意味は大きい。その上で、全加盟国に決議一七一八の完全順守をあらためて求めたのは、この安保理の制裁決議を履行しない国が多く、半ば形骸(けいがい)化しているからである」、朝日「きわめて妥当な声明だ。拘束力はないとはいえ、国際社会の一致したメッセージを出せたことを評価する。日本と、当初は米国も、拘束力のある決議を求め、中国やロシアは反対した。安保理の亀裂をさらすようでは逆効果になる。米中を中心に議長声明で折り合いをつけた。日本の強い主張が文言に生かされた」、岩手日報「難航しながらも、安保理がミサイル発射から九日目に全会一致で意思を示したことに意義がある。挑発によって外交を有利に運ぼうという北朝鮮の思惑を空振りさせることにつながる」、西日本「新決議は採択できなかったが、議長声明には日本の主張がほぼ盛り込まれた。日本は名を捨て実を取ったと言える。中国も含め、安保理が一致して『非難』の立場を明確にできたことは評価したい。北朝鮮は国際社会の声に、真摯(しんし)に耳を傾けなければならない」。

《実効性が課題》山陽「議長声明採択は安保理として何とか体面を保った形にはなった。ただ、拘束力を有する決議と、公式文書にとどまる議長声明の意味合いの違いは大きい。実効性の面で疑問も残る。声明採択を受け、北朝鮮は予想通り強く反発してきた」、新潟「議長声明に実効性を持たせることができるかどうかが次の課題だ。制裁問題などが具体的になれば、中国やロシアは、また及び腰になるかもしれない。北朝鮮はそこを見越して、早くも六カ国協議からの離脱や核施設の再起動をちらつかせている」、産経「米中露などが議長声明で歩み寄った理由は、北朝鮮が反発して6カ国協議再開が困難になるのを恐れたためだ。にもかかわらず、その結果として弱められた議長声明に対し、北朝鮮は『6カ国協議は不要で、協議の合意には拘束されない』と言い始めた。『北の反発』を恐れて譲歩するような対応に何の効果もなく、役に立たないことが示されたといっていい」、秋田「『圧力』に軸足を置きながら国際的な包囲網をつくるという日本の狙いは、不発に終わった。その意味では、日本外交が事実上敗北した、といっても過言ではない。最大の原因は、日本が頼みとした米国の方針転換である」、日経「安保理の現実は、結果的に実効性の乏しい合意文書を発表してきた北朝鮮に関する六カ国協議の空洞化と重なる。(略)中ロ両国は早く気づいてほしい。核を廃棄せず、ミサイル実験をする北朝鮮が、両国を含む地域全体の安全を脅かしている明白な事実に――」。

6か国協議再開へ導け

《団結して対処》毎日「日米韓3国は北朝鮮の揺さぶりに動じることなく、一致団結して確実な対処を進めることが何より肝要である。(略)北朝鮮が6カ国協議を拒否しながら、米朝直接交渉を望むのは目に見えている。米国は速やかに態勢を整え、中国とも緊密に協力して北朝鮮を6カ国協議へと導く工夫をしてほしい」、中日・東京「安保理の究極の目的は、北朝鮮の大量破壊兵器の開発に歯止めをかけることだ。関係国は国際世論を背に六カ国協議再開に向け北朝鮮への説得を始めてほしい。北朝鮮の実情は強気の発言とは裏腹に、厳しいとみるべきだ」、読売「(北朝鮮は)いつもながらの瀬戸際戦術で、オバマ米政権に米朝交渉の早期再開を迫り、譲歩への見返りを狙っているのかもしれない。だが、北朝鮮が言葉の通り、核施設の再稼働に踏み切れば、6か国協議は意味を失ってしまう。6か国協議の議長国である中国の責任は重みを増している。最大の貿易国、支援国として、北朝鮮への制裁の徹底などあらゆる有効な手段を講じてもらいたい」、高知「北朝鮮が核活動を再開すると、積み上げてきた非核化プロセスは振り出しに戻ってしまう。『対話と圧力』のさじ加減は微妙だが、対話の道を模索する姿勢を崩してはならない」。(審査室)

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