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2009年 6月16日
改革の怠慢、ツケ回る
米GMの経営破綻をめぐる社説
再建はオバマ政権の課題
米自動車最大手のゼネラル・モーターズ(GM)が1日、連邦破産法11条の適用をニューヨークの連邦裁判所に申請し、経営破綻(はたん)した。今後は、法的管理の下で優良資産を引き継いで「新生GM」として再生の道を歩む。米政府は新生GMの株式の60%を取得して事実上の国有化による早期再生を図っていく。オバマ米大統領は演説で、新生GMは「再び米国の繁栄の象徴となる」と訴え、政府支援に理解を求めた。米製造業史上最大の経営破綻を40本の社・論説が取り上げた。
「甘え」「やむを得ない」
《国有化》新潟「自動車産業のすそ野は広い。救済しないと大量の失業者を生み、社会不安を醸成しかねない。(略)これがGMを国有化してまで助ける理由だろう。米政府はできるだけ早く株を放出し、重要問題のみに議決権を行使するという。経営への介入を控えるのは当然だ。最後は政治が助けてくれるという甘えが残っていては、市場競争に耐えられない」、毎日「世界最大の自動車会社として君臨してきたGMが破綻(はたん)し、国有化されるというのは、衝撃的なことだ。部品メーカーや系列の販売店網なども含め、GMが抱えている雇用は巨大だ。破綻となると、経済に対する打撃は大きい。(略)米政府はGM本体だけでなく部品メーカーなどにも支援を行うというが、米国外からの部品調達も多い。内外無差別で対応するのが筋だろう」、愛媛「予想された流れとはいえ、米製造業史上で最大の経営破綻(はたん)という衝撃は大きい。再建策は当面の危機回避であり、『新生GM』の姿は不確かなままだ。(略)結果として、規模が大きい破綻は国が助けてくれるという甘えを認めざるをえなくなった。あくまでも政府支援は例外で、一時的な措置であるとくぎを刺しておきたい」、産経「米政府が民間企業の株式の大半を保有するのは極めて異例だが、米国史上最大の製造業の破綻(はたん)の影響を最小限に抑えるにはやむを得ない措置といえる。米政府は世界経済への悪影響を最小限にするよう万全を期してほしい」。
《古い体質》日経「どんな優良企業も自己変革を怠れば、没落する。GMなど米国車の弱みがあらわになったのは1970年代の2度の石油ショックだ。燃費のいい小型車の人気が高まったが、『小さいクルマは利益も小さい』として小型車を軽視してきた米国車メーカーは対応が遅れた」、岐阜・日本海など「企業規模を大きくすることには熱心だったが、消費者のニーズに応えられなかった。利益の大きい大型車を主力商品にすえ、改革を怠った。『顧客が何を望んでいるのか分かっていない』『車に関しては自分たちの方が顧客よりよく知っていると勘違いしている』―など多くの批判が渦巻いていた」、北海道「拡大路線のなかで見過ごしてきた高コスト体質。大型車が中心の商品構成はガソリン高騰で深刻な販売不振を招いた。金融危機にはリストラで対応するしかなくなっていた。背景には旧態依然の経営体質に安住していたことがある」。
エコカーの開発が鍵に
《環境対応》読売「大規模なリストラでGMをスリム化しても、速やかに再建できるかどうかは楽観できない。巨額の公的資金投入に対して、米国民の視線も厳しい。最大の問題は、エコカーなどの『売れる車』を開発し、競争力を回復することができるかどうかだ」、朝日「大株主であるオバマ政権は、電気自動車など環境対応車の開発に巨額の資金を援助して、GMをグリーンな新産業の担い手として蘇生させたい考えだ。しかし、政府主導で事業の縮小均衡はできても、収益性をよみがえらせる事業再生までは困難だ」、中日・東京「自動車産業は米国が目指す緑の新政策の重要な一角を占める。新政策は化石燃料の大量消費から脱却し、風力などの新エネルギーに移行する大胆な社会変革だ」、神戸「オバマ政権は先月、自動車の燃費規制を7年後から日本や欧州並みに強化すると表明した。新生GMがこの基準に適合し、消費者に受け入れられる車をつくることが、当面の目標になるだろう」。
《米政権の賭け》信毎「再生には多くの困難が予想される。オバマ政権が背負った課題は一段と厳しいものになる。(略)オバマ政権が事業の再生に失敗すれば、景気回復の足を引っ張るだけでなく、米政治も不安定になるかもしれない」、熊本「米経済は『金融大国』のバブルがはじけ、自動車産業も弱体化。次の基幹産業も見当たらない状況で、大きな転換点を迎えた。GM再建は、オバマ大統領にとって大きな賭けとなることは間違いない」、西日本「再出発には最悪の経済環境ともいえるが、米政府が責任を負うことになった以上、重荷を背負ってやり遂げてもらうしかない」。(審査室)