2009年 6月30日
首相の判断遅すぎる

鳩山総務相の更迭をめぐる社説
支持率急落、早期解散を

混迷を続けた日本郵政の社長人事をめぐり、西川善文社長の続投に反対する鳩山邦夫総務相が12日、辞任した。事態収拾が遅れ、郵政民営化をめぐる自民党内の対立が再燃する中で、麻生太郎首相は「盟友」を事実上、更迭した。辞任直後の各紙世論調査では内閣支持率が軒並み20%前後に下落した。総務相更迭と支持率急落を46本の社・論説が取り上げた。

日本郵政の社長にも責任

《ドタバタ劇》新潟「政権末期を象徴する辞任劇といえよう。(略)辞めた鳩山氏が胸を張り、辞表を受け取った首相が『悲しく、残念だ』と肩を落とす。悲しいのは、ドタバタ劇を見せつけられる国民の方だ」、中日・東京「盟友造反の落胆は察するにあまりあるが、お友達内閣をつくったのは首相本人である。指導力を発揮できない首相と、なれ合いの雰囲気の中でトップの意向を軽んじる閣僚―。これが政権のお寒い現実だ」、宮崎「民営化された郵政事業が国民のためのサービスを提供できているか。それを点検した上で、今後の事業方針を明確に示すという肝心な事が議論されなかった。鳩山氏も、鳩山氏に反発する自民党議員も自らの主張を外向けに叫んでいただけだ」。

《民営化路線》日経「もっと早く決断すべきだったが、鳩山氏の罷免も辞さぬ姿勢で収拾に動いた首相の判断は是とする。鳩山氏の更迭を契機に、民営化路線を再加速させる必要がある」、産経「再任する内閣の方針を受け入れない閣僚を更迭したのは当然だが、首相の決断が遅すぎた印象は否めない。(略)こうした動きを許すのも、社長人事をてこに民営化路線を転換したいとの考えが政府・与党内に根強く残っているからではないのか」、信毎「問題の根をたどっていくと、郵政問題について首相の足元が定まらない点に行き着く。(略)『(民営化に)賛成ではなかった』という国会答弁を批判されると、『民営化した方がいい。最終的にはそう思った』とあっさり修正したりしている。こんな中途半端な姿勢では、問題に対応しきれないのも当たり前だ」、愛媛「郵政選挙で得た衆院議席をふりかざし、再可決を連発してきた首相が、郵政民営化に対する定見の乏しさから足元をゆさぶられる。皮肉なしっぺ返しというほかない」。

《経営責任》徳島「続投が決まったとはいえ、西川社長の責任も免れない。今回露呈した日本郵政をめぐる問題について、自身の口からきちんと説明していないからだ。西川社長は先の国会の集中審議でも、続投への意欲は語ったが、組織のどこに問題があり、どう立て直していくのか、その道筋はほとんど示さなかった。これでは国民の理解は得られないだろう」、北海道「かんぽの宿の売却問題では入札手続きの不透明さが指摘され、郵便不正事件など不祥事が相次ぐ体質も改められていない。西川氏の経営責任はあいまいなままだ。首相は、こうした問題で責任の所在をどう見るか。国民に分かりやすく説明する必要がある」。

政権延命は願い下げに

《国民の反応》中国「もはや麻生太郎首相に日本のかじ取りを任せてはおけない。そんな国民のいらだちが、ストレートに出ているようだ。先週末の報道各社の世論調査によって、内閣支持率の急激な落ち込みが浮き彫りになった」、読売「麻生首相も驚く数字だったのではないか。まさに進退窮まると言えるような状況だ。読売新聞の緊急世論調査で、麻生内閣の支持率が22・9%に下落した。(略)原因は明らかだ。日本郵政の西川善文社長の続投に異を唱えていた鳩山前総務相の更迭にある。本紙の調査では、『更迭する必要はなかった』が65%に上った」、琉球「(共同通信の)世論調査で麻生内閣の支持率は17・5%と8・7ポイントも急落した。(略)疑惑を招いたトップの責任を不問に付した首相の判断は、国民感情とあまりにずれていたということだろう」。

《信を問え》朝日「今回の混迷によって、郵政民営化の賛否を超えて、首相の求心力が決定的に弱ったのは間違いない。(略)国民の願いは、信頼できる、実行力のある首相であり、政権だ。内外を覆う危機の中で、いたずらな政権延命は願い下げにしたい」、毎日「首相の決断力、統治能力の欠如に対しては与党内からも不満が噴出している。政権の立て直しのためではない。日本の政治を立て直すために一刻も早く衆院を解散し、総選挙で国民の信を問うべきだと改めて指摘しておきたい」、高知「小泉元首相による4年前の郵政選挙で得た衆院の300議席超が、麻生首相の政権運営の基盤だ。民意に基づく政権でないことが、麻生内閣で3人目の閣僚辞任劇の背景にある。国民に訳の分からない混迷を続けるより、速やかに解散・総選挙をすべきだ」。(審査室)

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