2009年 7月21日
「政権選択」問う決戦

「8・30衆院選」表明をめぐる社説
窮地の判断に際どさ

麻生太郎首相は13日、次期衆院選について「8月18日公示、同30日投開票」との日程で実施すると表明した。だが、自民党内では「麻生降ろし」をめぐる思惑から、衆院解散に向けて政治的な駆け引きが続いた。14日の衆院本会議で、民主党など野党提出の麻生内閣不信任案は与党多数で否決、参院本会議では麻生首相問責決議が野党多数で可決された。これを受けて野党は一切の国会審議を拒否、国会は空転した。「政権選択」をかけた真夏の選挙戦へ事実上突入した政治の流れを、70本を超す社・論説が取り上げた。

自民に不信、民主には不安

《窮余の策》朝日「今回の決断にしても、首相にとってのベストにはほど遠い。党役員人事の頓挫、静岡県知事選の敗北、東京都議選の歴史的大敗と失点が続いた。視野に置いていた8月初旬の選挙には与党内の理解が得られず、かといって時機を待てば『麻生おろし』の強風に倒されかねない。そんな不安にかられての窮余の策だったのではないか」、西日本「東京都議選の自民党惨敗で窮地に追い込まれた麻生首相にとっては、際どい政治判断だったに違いない。(略)麻生首相の手で衆院を解散させ、首相の顔を立てる見返りに、任期満了に限りなく近い総選挙日程を組んで態勢の立て直しを図る―。首相と与党の間で、そんな妥協が成立したとみられる」、中日・東京「都議選惨敗直後の衆院解散方針を与党にはねつけられての妥協の産物ともいえる。首相決断が肝心な場面でも軽んじられた。(略)『解散は自ら決断する』と繰り返してきたのに、与党の意向に配慮せざるを得なかったのは、首相の置かれた立場を象徴していよう」。

《自民党の劣化》南日本「何でもありの政治、正当性に欠ける相次ぐ首相交代、強引な国会運営などが国民の政治不信を募らせた。政権を長年担ってきた自民党政治が劣化した現実に目を向け、改革の姿勢を見せなければ、総選挙の勝利などとてもおぼつかない」、新潟「人気取りに終始し、国の進むべき方向を打ち出し得ない政治に、国民は辟易(へきえき)している。都議選をはじめ、一連の地方選挙で自民党が連敗しているのは、こうした国政の状況に対する異議申し立てと見ていい」、産経「(自民党が)国民の信頼と支持を得る政党として、今後も存続していくためには、解党的出直しを行う最後の機会と位置付けるべきだ。この1カ月余りの期間に民主党との二大政党対決に臨める態勢を整える必要がある。首相がその先頭で逆風に立ち向かうことができるかどうかが問われている」。

《民主党に課題》読売「衆院選は、自民党と民主党の2大政党が有権者に真正面から『政権選択』を問う戦いになる。(略)有権者が民主党に不安を覚えるのは、民主党政権が誕生した際、内政、外交両面で、混乱なく日本の舵(かじ)取りが出来るのかということだ」、日経「民主党は政権公約に月額2万6000円の子ども手当の創設や高速道路料金の無料化などを盛る方針だが、財源の裏づけは不明確だ。党内の意見が割れている外交・安全保障政策を不安視する声も多い」、上毛・大分など「地方選の勝利や世論調査での民主党の優勢は『政治を変えたい』という国民の気持ちの表れだろう。だが民主党支持の理由が『自民党が駄目だから』では、民主党政権になっても基盤は安定しない。民主党に政権を任せたいという積極的な支持を増やせるかが鍵だ」、北海道「野党第1党の民主党の政策には、財源を含めいまだに不明確な点が多い。政権運営のイメージも十分に明らかになったとは言えない。鳩山代表の虚偽献金問題でも、さらに説明を尽くす努力が必要だ」。

各党は政策掲げ競い合え

《マニフェスト》毎日「総選挙が8月末になったことで有権者が各党の政策をじっくり吟味できる利点はある。各党はマニフェスト作りを急ぎ、早く提示すべきである。有権者の選択から逃げ続けてきた麻生首相と与党はもはや奇策に走らず、堂々と政策で争うことだ」、福井「年金や医療など社会保障制度が十分機能せず、景気・雇用の危機など将来の不安も増すばかりだ。政治が『機能不全』と指摘されている間に、課題が山積みになっている。国民の将来不安にどう応えていくのか。各党は有権者の審判を仰ぐため、選択肢となるマニフェスト(政権公約)を前面に掲げ、政策で競い合いながら信を問う状況をつくりだすべきである」、高知「8月の衆院選に向けて何より重要なのは、各党が国民の判断材料を十分に提供することだ。過去4年間の総括を踏まえ、この国の進むべき方向を具体的に示すのはむろん、財源などを明確にすることも求められる。確かなマニフェスト(政権公約)がなければ、政治決戦の名には値しない」。(審査室)

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